電子化、見える化、そしてデータに基づく問題解決へ
DXのグランドデザインとYDC SONARで”自走する製造業DX”を実現

日本の製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)が大きく進化している。単なる電子化や見える化に留まらず、「PDCAサイクルの実行」「製造現場での問題解決」「障害発生の予兆」までを視野に入れる。このDXの理想にいち早く気づき、確実な成功をおさめているのが大塚化学株式会社である。
同社では、紙帳票の電子化に取り組む中で、フューチャーアーティザンからの提案を受け、DXのグランドデザインを構築。全16プラントのデータを収集・統合し、それらに各部門のシステムから収集された情報を加えダッシュボードで可視化。国内はもちろんグローバル全体の問題解決の「質」を高めている。
この仕組みを支えているのがフューチャーアーティザンの提供する「YDC SONAR」である。大塚グループの望む「自走」が可能であること、そしてそれらを確実に支援するサポート体制が認められての採用であった。

お客様に聞く

大塚化学株式会社 生産本部 グローバル生産室 室長 南條浩史 氏  (上段左から2人目)
大塚化学株式会社 生産本部 グローバル生産室 チーフ 赤澤信明 氏  (下段右から1人目)

※所属・役職は取材時点に基づく

DXのグランドデザインを構築

大塚グループは医薬品や食品・飲料、化粧品、化学品に至るまで多岐にわたる事業を展開する日本有数の企業グループである。大塚化学は、化学品領域を担っており、医薬品原薬やゴム・樹脂用添加剤、摩擦材、フィルムや電子部品向け複合材料などを製造。電力、蒸気などのエネルギーもグループ各社に提供している。
徳島県内に3つの生産工場を持ち、海外では米国、韓国、インドネシア、ベトナム、インド、中国、スペインなど世界7カ国17拠点を構える。アジア・欧米市場を中心にグローバル展開を推進している。

大塚化学のDXへの取り組みは、2021年12月のDX推進プロジェクトチーム立ち上げから始まる。現場から紙伝票をなくそうといった情報のデジタル化に着手したが、当時のことを大塚化学株式会社 生産本部 グローバル生産室 室長 南條浩史 氏は「正直、最初はDXとは何かほとんど分かっていませんでした」と振り返る。
2022年1月、フューチャーアーティザン(旧・YDC)を紹介され、導入企業の見学を行い、構想の輪郭を明確にしていった。2022年9月にはフューチャーアーティザンとともに同社DXの「グランドデザイン」の構築を開始。「グランドデザインで最も重視したのは、“利益の質”の向上です。単なる省力化やコスト削減ではなく、データを活用して意思決定や問題解決の質そのものを高めていくことを目指しました」と南條氏は説明する。

南條様

YDC SONARによるDX・GXの実現

同社DXの中核となっているのが、帳票電子化ツール「i-Reporter」と製造業データ活用プラットフォーム「YDC SONAR」である。
i-Reporterは、従来手書きで運用されていた紙の帳票をデジタル化し、現場データをリアルタイムで収集・活用するためのツールである。導入初期の利用者数は30名程度からスタートしたが、現在では生産部門のみならず、品質管理、工務部門など多領域に広がり、ユーザー数は100名を超えている。

YDC SONARは、各種データを統合・可視化する分析基盤である。運転データや生産実績、エネルギー使用量、品質データなど、工場内外に点在するあらゆる情報をダッシュボード化し、現場から経営層に向けて「見える化」を可能としている。
「ダッシュボードで変数の相関を見ることで、これまで分からなかった傾向が浮かび上がるようになりました。バッチ処理の所要時間を可視化し、ボトルネックの特定にも活用しています。すでに100種以上のダッシュボードが現場でつくられています」(南條氏)。

朝の連絡会では従来、課長が担当プラントに電話やメールで情報収集し、Excelで資料を作成する作業に追われていた。それが現在では、引継帳の電子化により各プラントのデータが自動で集約され、YDC SONARのダッシュボードに自動反映されている。
さらに、サプライチェーン全体を俯瞰し、販売計画から生産、品質管理、販売、P/L分析に至るまでを一連のフローとして可視化できる。
エネルギー使用量やCO2排出量、単価の推移などを把握可能。中期経営計画における投資進捗もガントチャートで可視化され、計画に対する実績、DX・GXの投資目的ごとの実行状況もグローバルに共有されている。

自走を支援するYDC SONAR

YDC SONARの採用にあたっては、複数製品を比較検討した。その中で、決め手となったのは「自走性」の高さだった。
「私たちは“自走”という言葉をキーワードに、現場が主体的にデジタルを使いこなし、拡張していける仕組みを目指しました」と南條氏は強調する。
「他社も見学しましたが、YDC SONARには“見たいものを見たい形で見られる”という柔軟性がありました。ダッシュボードのカスタマイズがしやすく、私たちの業務に合わせた形に自在に設計できます」と生産本部グローバル生産室 チーフ 赤澤信明 氏は認める。
「私たちの会社では、とにかく“まず自分たちでやってみる”という風土が根付いています。システム導入後にベンダーに頼らず、自分たちで業務に合わせて改善していけるプラットフォームが必要でした」(南條氏)。「自走」できるという特性は、大塚化学はもちろん、大塚グループの企業風土に適していた。
加えてフューチャーアーティザンというパートナーそのものへも信頼を置いている。「製品だけでなく、人で選んだという面が大きい。最初にi-Reporterの紹介を受けた時から、担当者の方々の誠実な対応とフォロー体制に好感を持ちました」と赤澤氏は語る。

赤澤様

SONARが導いた不良原因の特定と改善

DXの目的を「利益の質を上げる」ことに定め、その基盤は単なるITツールではなく、「気づき」と「判断」を支えるインフラとなっている。
「製品の含水率が規格から外れる不具合が発生したことがあります。そのヒアリング後にダッシュボードを構築、原因特定までを含めてわずか半日、翌日には現場との協議により改善アクションが検討されました」と赤澤氏は象徴的なエピソードを語る。

相談を受けて現場を訪問し、品質データや運転履歴をYDC SONAR上で分析。結果、真空乾燥工程で設定された減圧条件が、設備の影響により変化していたことが見えてきた。従来であれば、手作業でデータを集め、関係者間のすり合わせに時間を要していた。「現場が“なんとなく気づいていた”ことがデータで裏付けられると、全員が納得して改善に向かえるんです」と赤澤氏は語る。
以前は月末の締め処理が終わっても、原価計算や販売実績、在庫の見える化にかなりの時間を要していた。今では、締め終了後2時間もあればすべてのダッシュボードがアップデートされる。「過去の実績」をもとに数日遅れで分析を行い、その後にアクションを検討していたが、現在は販売データ・在庫状況・原価情報など、複数の基幹システムと連携した最新情報を可視化し、その場で対策や判断に移ることができる。

現場主導によるDX成功の本質

「DXをやりたいけれど、現場が動かない」といった相談は少なくない。南條氏は「成功の秘訣は、現場の功績にすること。あくまで現場が主役になるように動きました」と語る。
“教育”も欠かせない。YDC SONARやi-Reporterの勉強会は、これまでに延べ100名以上が受講。月1回、時には月2回という頻度で、基礎的な操作方法から実践的なワークショップまで多岐にわたる内容を展開した。データサイエンス理論を教えるのではなく、「あなたたちの業務はこうつながっている」「だからこの見える化が意味を持つ」という理解に至るまで、丁寧に支援を重ねてきた。

機械学習を組み合わせ予測の領域へ

大塚化学のDXは今、次のフェーズへと踏み出している。
「これまでの“起きたことを可視化する”段階から、“起きる前に予測する”という新たな領域に進めています。これまでできていなかった領域に挑戦できることが楽しみです」と赤澤氏は期待する。リアルタイムデータと機械学習を組み合わせることで、生産性向上に加え、安定運転や環境負荷の低減にもつなげていく。

DX推進の動きは国内製造拠点で本格化し、グローバル展開も進めている。国内、インドネシアの関係会社からは、実務担当者が来日し、グローバル生産室での研修を経て、現地のDXを主導していく。米国工場からは、DCSや記録計システムのデータを5秒間隔で収集し、1時間ごとにメールで送信され自動でダッシュボードが更新される。
国や言語を超えて「共通言語」となるのがデータであり、可視化と分析の基盤がYDC SONARである。

「YDC SONARがあるから、データを見ながらみんなで会話ができる。研究部門や生産部門と話していても、ただの感覚論では終わらず一緒にダッシュボードを見て議論できるんです」と赤澤氏は笑顔を見せる。
日本からグローバルへ、電子化と見える化から実行へ。大塚化学は次の時代のDX・GXを展開している。

お客様プロフィール

会社名

大塚化学株式会社 
Otsuka Chemical Co., Ltd.

本社所在地

〒540-0021 大阪市中央区大手通3丁目2番27号

創業

1950年

資本金

50億円

従業員数

連結 2,051名 単体 522名(2024年12月末現在)

事業内容

化学品の製造、販売

■ 関連リンク
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■ サービス/取り組み紹介
YDC SONAR

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