日本ガイシ株式会社 様
日本ガイシ株式会社(以下、日本ガイシ)では、ベリリウム銅の生産ラインにYDC SONARを導入。各種センシングデータやイベントログを収集・分析すると同時に、分析結果を可視化・共有する取り組みを進めている。YDC SONARを導入した経緯と成果について、日本ガイシ株式会社 金属事業部 管理部 マネージャー 伊藤 雄三氏、同事業部 生産技術部 マネージャー 田中 孔浩氏、同事業部 同部 サブマネージャー 中山 信亮氏に詳しく伺いました。
本社
愛知県名古屋市瑞穂区須田町2番56号
設立
1919年5月5日
資本金
698億円(2016年3月)
代表者
代表取締役会長 浜本 英嗣)/代表取締役社長 大島 卓 /代表取締役副社長 武内 幸久
従業員数
3,700人(2016年3月)
おもな事業内容
がいしなど電力関連機器、産業用セラミック製品、特殊金属製品の製造販売及びプラントエンジニアリング事業
1919年の創業以来90年以上、多孔質セラミックス、機能性セラミックス、構造材セラミックスといったキーマテリアルと、独自の成形・焼成・加工・評価技術などのキーテクノロジーを融合。セラミックスの可能性を引き出す革新的な製品を生み出し続けている。エネルギー、エコロジー、エレクトロニクスの領域で事業を展開し、ものづくりに対する情熱と誇りを持って知識や技術、技能を磨き、激しい国際競争を勝ち抜いている。
金属事業部 生産技術部 マネージャー 田中 孔浩氏(左)、同事業部 管理部 マネージャー 伊藤 雄三氏(中央)、同事業部 同部 サブマネージャー 中山 信亮氏(右)
ベリリウム銅の生産ラインにおいてYDC SONARを利用しています。ベリリウム銅の生産ラインは、板・条・棒など形状によってラインを分けていますが、今回、YDC SONARを導入したのは板形状の製品を生産するラインとなります。
YDC SONARは主に、「(1)データの収集・統合・蓄積」、「(2)データの加工と可視化」、「(3)収率の改善を図るための解析」という3つの用途での利用を進めています。詳細は次の通りです。
(1)データの収集・統合・蓄積
生産ラインの各工程において発生する、約600種類のセンシングデータやイベントログを10秒ごとに収集し、YDC SONARのDWH(データウェアハウス)に統合・蓄積しています。
(2)データの加工と可視化
YDC SONAR +Plusオプションを使用してDHWから抽出・加工したデータをバッチで処理し、グラフ化しています。グラフデータは、毎日自動更新され、Webブラウザでサマリ情報と詳細情報を閲覧できるようにしています。
(3)収率の改善を図るための解析
YDC SONAR上で、多変量解析などさまざまな角度や手法を用いてデータを解析しています。これまで見過ごしてきた小さな条件の変化を見極めることができるので、従来の手法では難しかった収率低下の要因を特定し、改善策を打てるようになりました。
これまでも生産ラインのデータを収集・分析してきましたが、ほぼ手作業で対応してきたため、1日に処理できるデータは200~300個が限界でした。
そのため複雑な分析をしなければならない工程や、大量のデータ分析を必要とする工程の最適化を図るのは容易ではありませんでした。また、全体最適という視点で捉えたとき、工程間の因果関係や影響度合いを見極めるのも難しい状況でした。
センサーも大幅に増設して、1日あたり10,000~15,000個、すなわち従来の約50倍のデータの収集を開始。YDC SONARによって、効率的かつ一元的に収集・管理・分析できるようになりました。その結果、「(1)収率の向上」や「(2)間接業務の効率化」、「(3)情報共有の迅速化」といった成果が上がっており、間接的には「(4)データ収集・解析プロセスの見直し」といった効果も見られます。使いこなしていけば、さらなる成果の向上も期待できると考えています。各成果の詳細は次の通りです。
その結果、「(1)収率の向上」や「(2)間接業務の効率化」、「(3)情報共有の迅速化」といった成果が上がっており、間接的には「(4)データ収集・解析プロセスの見直し」といった効果も見られます。使いこなしていけば、さらなる成果の向上も期待できると考えています。各成果の詳細は次の通りです。
【成果1】収率の向上
YDC SONARの利用を開始して1,500ロット分のデータを分析したところ、今まで見えていなかった変化に気づき、結果収率を0.5%向上することができました。0.5%という数字は大きくありません。しかし、これまでさまざまな生産ラインの改良や設定の見直しを重ねてきた中で、従来の手法では収率を改善するのは難しい状況が続いていましたので、小さくても確実な効果の積み重ねが見えるようになった事は大きな成果だと捉えています。
【成果2】間接業務の効率化
これまでは、サマリレポートを数時間をかけて表計算ソフトなどを用いて作成し、イントラネットの掲示板にコピー・ペーストしていました。処理が自動化されたことで作業時間とリソースが不要となり、作業ミスなどによる遅れやミスといったリスクも改善されました。
【成果3】情報共有の迅速化
これまでは月初に前月の実績データを分析・確認していたので、仮に問題や計画との乖離が発生していてもその発見が遅れ、対策が後手に回る事がありました。
YDC SONARを導入してからは、前日のサマリデータを簡単に確認できるようになったので、改善が必要な場合のアクションも迅速に対応できるようになりました。収率の低下の影響を最小限に食い止められるようになっただけでなく、データに対する意識も変わってきたと感じています。
【成果4】データ収集・解析プロセスの見直し
旧来のデータ収集・分析プロセスや集計用のマクロなどは、10年来大きな見直しはなされていませんでした。今回、プロセスや分析手法をYDC SONARに落とし込むことが、解析手法やプロセスの見直しをする良い機会となりました。
ベリリウム銅は比較的高価で、代替品への置き換えや使用を控えられやすい材料です。そのため、コスト競争力を維持していくために収率を改善し、生産効率を向上させるために積極的に取り組んできました。実際、ここ10年で約10%の収率向上を実現しています。
一方、旧来の分析手法ではさらなる収率の向上を実現するのは難しい状況で、抜本的に分析手法を変える必要がありました。
そのため、製造工程から得られるデータを幅広く収集・分析して、中長期的な競争力を確立するという方針が打ち出され、2009年に溶解鋳造工程に多数のセンサーを取りつけるとともに、YDC SONARを導入してデータ解析を開始しました。
そこでよい結果がでたので、2014年にそれ以降の全工程に対しセンサーも大幅に増設して収集するデータを増やし、あらためてビッグデータを活用する取り組みの一環として、YDC SONARの活用を検討することとなりました。また、多量のデータを関係者が簡単に見られるよう、YDC SONAR +Plusオプションを導入しました。
たとえば、データ分析という視点でBIツールと比較した場合、BIツールは情報システム部門やデータ分析の専門家があらかじめデータソースを整備(前処理)して、経営者層に決められた形で結果を見せるのには向いていると思います。
一方、YDC SONARはデータの収集から分析、レポーティングまで、品質管理業務に必要な機能の一連の流れが網羅されており、収率の要因を探るような場合も直感的に分析できるので、現場の担当者にとっては使いやすいと思いました。
情報システム部門などの手を借りることなく、現場がその場で視点や切り口を変えながら作業するのには、YDC SONARのほうが敷居が低いと感じました。
また、YDC SONAR +Plusオプションを使って、だれでも簡単にサマリを確認できるのも、私たちにとっては有用な機能でした。
さらに、前回導入を断念した後も、フューチャーアーティザン株式会社(以下、フューチャーアーティザン)の担当者がYDC SONAR +Plusオプションの活用提案をし続けてくれました。その中で視野が広がったこともありましたし、製造現場での経験やノウハウが豊富なので、導入時や導入後のサポートも安心して任せられると考えたことも、YDC SONAR +Plusオプションを採用した1つの要因となっています。
サマリ用のテンプレートの作成・設定には少し手間取りましたが、フューチャーアーティザンにサポートしてもらいとても助かりました。
板形状以外の生産ラインにも適用していくつもりですが、データの解析を進めて、さらなる改善や効率化を図ることで、高品質で高付加価値な製品を、より効率的・安定的に生産する体制を実現していきたいと考えています。さらに、リアルタイムに分析データの傾向を見定めることで、異常やトラブルを未然に防ぐ事前予知保全にも活用できればとも考えています。
また、生産ラインだけの収率だけでなく、受注・在庫・出荷データなどの情報と組み合わせた解析をすることで、生産計画の最適化も図っていきたいと考えています。たとえば、同じ800kgの鋼材を生産するにしても、1回で800kg生産した方が効率的なのか、200kgを4回に分けて生産した方が効率的なのかといった判断ができるようになれば理想的です。
YDC SONARの活用提案をし続けてくれたことにはとても感謝しています。
解析結果の表現力の向上をお願いしたいです。現在のYDCSONARのグラフをそのまま社内報告資料に使えず、エクセル等で再加工しており、その点については作業効率が悪いと感じています。また、最近一緒に取り組み始めましたが、歩留り改善の解析のコンサルタント活動にも力を入れて欲しいです。
お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
※取材日時 2016年9月
※日本ガイシサイト
※記載の担当部署は、取材時の組織名です。
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