製造業の複雑な温室効果ガス排出計算に対応
ESGマネジメントプラットフォーム「Kkuon」で「見える化」の作業時間を1/10に短縮


株式会社ミクニ様

脱炭素社会あるいはカーボンニュートラルは、人類共通の課題である。多くの企業では2050年までの実質的なカーボンニュートラルの実現を目指し、担当部門を置いて二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガス排出量の把握と削減に取り組んでいる。しかし、その計算方法が煩雑であり、国や業界によっては排出係数や原単位が異なる。
そこで株式会社ミクニ(以下、ミクニ)様が採用したのがフューチャーアーティザン株式会社の開発したESGマネジメントプラットフォーム「Kkuon」であった。ESGに関する情報を管理・分析する統合プラットフォームであり、ESGデータの収集、管理、レポーティング、さらには分析までを一元的に可能とする。大幅な作業軽減となり、温室効果ガスの排出量「見える化」の作業時間を、特に算出の困難なSCOPE3においては1/10にまで削減することができた。同社では国内各拠点での実験を終了し、ワールドワイドな展開に取りかかっている。

■株式会社ミクニ

創立
大正12年10月1日

設立
昭和23年10月1日

資本金
22億1,530万円

代表取締役社長
CEO&COO

生田 久貴

主な事業内容
四輪自動車・二輪車向けの製品、生活環境機器、福祉車両、
介護機器、航空宇宙産業向け部品、緑地関連商品等の製造・販売

 

お客様に聞く

 株式会社ミクニ
 コーポレート本部 サステナビリティ推進室 室長
 柏原隆志氏

燃料噴射・ガス機器関連のパイオニア

ミクニは、電子制御燃料噴射などの4輪車・2輪車用周辺部品やガス機器周辺部品を製造・販売するグローバル企業である。同社の製品は国内外の多くの自動車やバイク、そしてキッチンで使うガス機器などに搭載されており、信頼性と技術力で高い評価を得ている。
「1923年に創業し、おかげさまで100年を越えることができました。ものづくり企業として、100年にわたって技術革新と製品開発に挑んできました」と、コーポレート本部 サステナビリティ推進室 室長 柏原隆志氏は説明する。
主力商品の一つとなっている電子制御燃料噴射システムは、かつてはキャブレターと呼ばれ、燃料と空気を混合してエンジンに供給するメカニカルな部品であったが、今では電子制御となっている。エンジンの状態をリアルタイムでモニタリングし、燃料の噴射量を正確に制御し、燃費の向上や排出ガス削減など環境負荷低減にも貢献している。

カーボンニュートラルに向けた3本の柱

ミクニグループは2050年のカーボンニュートラル実現を目指す長期目標を決定し、2021年に設置したのが「サステナビリティ推進室」である。同室が中心となってグループ全体で取り組んでいる施策が「省エネルギー」「CO2フリーの電力化」「燃料転換」の3本の柱だ。
1つ目の省エネルギーは、使用するエネルギーそのものを減らすことを目標とし、電気、重油、ガスといったエネルギーの使用量に関する詳細な数値を収集・分析し、削減に向けた計画を進めている。
2つ目はCO2フリーの電力化。太陽光発電と蓄電技術の導入を積極的に進めている。たとえば、静岡県菊川工場では、駐車場にカーポート式の太陽光発電システムを設置し、日中に使用する電力のCO2フリーに取り組んでいる。小田原事業所においても、同様のシステムを建設中である。
3つ目の柱は燃料転換。CO2はガスや重油を燃やすことで発生するが、これらを使用せずに電力に置き換えられないか検討中である。ガスや重油を暖房や蒸気の生成に利用しているが、10年規模の長期計画を立案し、これらの燃料を電気に転換する方針である。その電力は太陽光発電などで賄うことで、カーボンニュートラルを目指している。

粘り強さと製造業における知見でフューチャーアーティザン株式会社を選択

カーボンニュートラルに向けた3本の柱を打ち出すと同時に、サステナビリティ推進室では温室効果ガス排出量のデータ収集・見える化・分析を可能とするシステム構築に着手した。
同社の品質管理部門でYDC SONARを導入したことを機に、柏原氏はフューチャーアーティザン株式会社を知る。
YDC SONARは生産ラインから製品データをリアルタイムに取得し、各製品の履歴や素材、性能を詳細に把握するシステムで、この時に同社とフューチャーアーティザン株式会社には強固なパートナーシップが築かれた。
「フューチャーアーティザン株式会社は大変粘り強く、こちらの要求に応えてくれます。彼らとならばサステナビリティ管理の理想的なシステム構築ができるのではないかと考え、相談を持ちかけました」と、柏原氏は振り返る。
「パートナーとして検討したのはフューチャーアーティザン株式会社ばかりではありません。同様のシステムを提供している他社を検討しましたが、Excelでの処理を効率化させたような製品がほとんどで、ミクニが実現しようとしている複雑な計算処理には使えるレベルではありませんでした。フューチャーアーティザン株式会社は製造業における知見が抜きん出ていました」と柏原氏は認める。

ESGデータの収集・見える化・分析までを一元処理

開発プロジェクトは2021年から始まり、設計から構築、テスト運用を経て、2024年の春にはベータ版を完成させた。現場での試験を繰り返し、7月から国内3拠点の工場で本格稼働を開始している。
システムは、エネルギー種類別や部門別にグラフ化できる機能を備え、CO2排出量の詳細な把握が可能となる。
さらに、人事部の出張費精算システムと連携して、出張に関連するCO2排出量の管理が行える。利用した移動手段が新幹線なのか、飛行機なのかで数値が異なって計算処理される。勤怠管理システムの通勤手段や距離データからCO2排出量も導き出せる。
「これらCO2排出量をグラフで見える化し、全社はもちろん、事業部ごと、さらには製品単位、個人に及ぶまでエネルギー使用量やCO2排出量をリアルタイムに確認し、削減目標や対策を打つことができます」と、柏原氏は強調する。

Excelによる手作業をなくし作業時間が1/10に

ESGマネジメントプラットフォーム「Kkuon」により、ミクニ様は従来の手作業によるデータ収集・計算から完全に脱却することができた。システム構築前は、CO2排出量やエネルギー使用量のデータはExcelで個別に管理され、計算式を当てはめる作業に時間がかかっていた。手作業でのデータ収集と計算は、正確性に欠け、業務効率も低かった。しかし、システム構築後は、エネルギー使用量やCO2排出量を瞬時に確認できるようになった。
「それまでのExcelによる手作業と比べると作業時間が1/10になりました」と、柏原氏は笑顔を見せる。
さらに大きな効果は社員の意識改革だ。カーボンニュートラルの取り組みを始めた当初は、多くの社員が環境問題を他人ごとと考えていた。しかし、CO2排出量の見える化により、各自の業務がどのように環境に影響を与えているのかが明確になり、自分たちの責任として捉えるようになった。これにより、社員一人ひとりがカーボンニュートラルの達成に向けて積極的に取り組む姿勢が育まれた。

持続可能な未来の実現に向けて

「フューチャーアーティザン株式会社は期待以上の粘り強さで、当社の要求に応えてくれました。地球環境を守ることは全企業に共通ですが、その取り組みは各社で異なります。フューチャーアーティザン株式会社とESGマネジメントプラットフォーム「Kkuon」はその異なる要求に的確に対応し、必要となる対策を組み立てることができます。多くの企業にこのプラットフォームを利用していただきたいと思います」と柏原氏はフューチャーアーティザン株式会社とESGマネジメントプラットフォーム「Kkuon」を評価する。
フューチャーアーティザン株式会社の属するフューチャーグループでは、早稲田大学と業界が異なる企業 6 社が参画する「Sustainable Future Leadership コンソーシアム」を共催し、サステナブル経営に力を入れる企業が認められる風潮を作っていくため、子供たちの価値観から変える教育やルールメイキングに向けた意見交換などを行っている。
ミクニ様も参画企業の1社だ。
同社では、全拠点のデータを一元管理し、全社員がカーボンニュートラルに向けた取り組みを自らのものとして実行できるように、世界中の社員がシステムにアクセスできるようにする。
「単に国やお客様からの要求に応えるためではなく、地球環境を守るために行動を見直すことが重要です。自分たちの未来を守るために、これからも積極的に取り組んでいきます」と、柏原氏は意気込みを語る。

※取材日時:2024年9月

CASE STUDY

その他の導入事例を見る

さらに詳しく知りたい方へ

導入にあたって気になるポイントを詳しく解説します

お問い合わせ・資料請求はこちら

見積依頼や無料相談はこちら

かんたん1分