横河マニュファクチャリング株式会社 様
横河電機グループの精密製品生産を担う横河マニュファクチャリング株式会社(以下、横河マニュファクチャリング)では、YDC SONARを導入。これまでのアプローチでは解決が難しかった潜在的不適合の抽出や品質改善のスピードアップを実現している。 YDC SONARを導入した経緯と効果について、横河マニュファクチャリング株式会社 生産技術本部 要素技術部 部長 杉浦 純一氏、同本部同部 プリント基板・実装課 課長 舘沼 良行氏、同本部同部 庄司 新一郎氏に詳しく話を聞いた。
本社
東京都武蔵野市中町2-9-32
設立
2005年11月1日
資本金
50億1,000万円
代表者
代表取締役社長 真鍋 嘉利
従業員数
1,918名(2012年3月1日現在)
おもな事業内容
電気機械器具製造
1915年の創立以来、計測、制御、情報技術を軸に、最先端の製品を産業界に提供してきた横河電機グループ。その中で、半導体デバイスからプリント基板の製造、電気・計装制御盤、計測・制御 機器など、精巧な生産能力が必要とされる精密製品の製造を一手に担う。部品の調達から製造・納品・据付まで、一貫したポリシーのもとでの生産プロセスを構築し、グローバルな情報システムを活用しながら、高品質・高付加価値製品の多品種少量から大量生産までを可能にしている。
生産技術本部 要素技術部 部長 杉浦 純一氏(写真右)、同本部同部 プリント基板・実装課 課長 舘沼 良行氏(写真左)、同本部同部 庄司 新一郎氏(写真中央)
横河電機グループでは、NYPS(New Yokogawa Production System)を基本思想とし、一人ひとりが、QDC(Quality,Delivery,Cost)の向上を目指し、多品種少量生産の「ものづくり」を行っています。グループ内で精密製品の生産を請け負っている当社においても、これまでNYPS改善活動により品質向上のための活動を続けてきました。
しかし、従来のアプローチだけでは解決できない慢性的な品質の問題があり、それを解決・改善する取り組みの一環としてYDC SONARを利用しています。
現在、具体的にはプリント基板の製造ラインと部品実装ラインでYDC SONARを導入しており、プリント基板の製造ラインでは慢性的に発生している不良の原因を探るツールとして、実装ラインでは前工程における品質改善スピードを向上させるために利用しています。
近年、製造工程において製造履歴や品質データ、プロセスデータ、装置データなど、さまざまな生産情報が得られるようになりました。当社においても、YDC SONARを導入する以前からそれらの情報をまとめて、品質管理に役立てるための取り組みを実践してきました。しかし、これまでは情報を個別に分析をしているだけで、有機的に結びつけて活用する段階にまでは至っていませんでした。
また、これは直接的な導入の要因とは言えないのですが、中国のプリント基板工場を見学した際、膨大な生産情報を手作業で管理しているのにも関わらず、人海戦術で迅速に処理しているのを目のあたりにしました。当社でも人海戦術以外の方法で生産情報をより迅速に処理できる仕組みを取り入れなければ、彼らに勝てなくなってしまうと感じました。
そのような状況下で、いくつかの製品の導入を検討してきたのですが、YDC SONAR以外に当社の要望に合うソリューションは見つかりませんでした。
YDC SONARを選択したのには、3つのポイントがあります。
(1)異なるデータベースを簡単に連結
YDC SONARでは、装置データを含む多彩なデータフォーマットのデータベースを容易に連結でき、表現力豊かなグラフ化機能も網羅されています。それを活用すれば、これまで見つけることができなかった潜在的な不良や、その不良を見つけるために手間と時間を費やしていた分析を、迅速かつ的確に実行できると考えました。
(2)プリント基板/部品実装ラインと相性が良い
YDC SONARは半導体や液晶工場における導入実績が豊富で、プリント基板の製造ラインや部品実装ラインにおける情報の分析や管理にも適していると考えました。
(3)コンカレントエンジニアリングの推進
経験や勘ではなく、不良の要因を客観的なデータで示すことで、開発部門や設計部門の理解も深まり、コンカレントエンジニアリングを加速させることができると期待しました。
これまで、プリント基板の製造ラインにおいてパターン欠損不良やパターンショート不良など、パターンに起因する不良が慢性的に発生していました。
もちろんこれまでも手をこまねいていたわけではありません。たとえば、パターン検査を実施する際に使用するAOI(Automatic Optical Inspection Machine:自動外観検査装置)に関しても、位置や画像などの不良情報を採取できるものに更新し、得られた情報をデータベース化するなど、品質改善へと取り組んできました。
ところが、AOIから得られる不良情報を蓄積したとしても、作業者や作業時間、作業装置といった生産情報との紐付けが容易ではなく、データを分析するための準備や整理に人手と時間がかかっていました。
さらに肝心の分析に関しても、勘や経験に頼った品質改善をせざる得ない状況で、「当たる」と上手くいくこともあるのですが、「当たらない」と時間を浪費してしまうことになり、結果として決定的な要因を見つけ出すことができなかったりということもありました。
たとえば、AOIからの品質情報とさまざまな生産管理情報とをYDC SONAR上で結びつけることで、慢性的に発生していたパターン欠損不良の情報を分析し、短時間で要因を突き止めることができました。
まず、AOIのデータベースから「パターン欠損不良」を抽出し、不良が発生している座標と件数を3Dマップ化しました。そうすると、プリント基板裏面の特定の位置に不良が発生していることが顕著にわかりました。
裏面に不良が発生しているということは、搬送時、コンベアのローラーに接触して、ダメージを与えていることが推定され、さらにダメージが発生する要因を考えると、プリント基板が重かったり、厚さが薄くたわんでダメージを与えているのかもしれないと考えられます。
そこで、検査履歴や不良モード、不良位置情報、不良写真といったAOIのデータベース情報と、工程時間、作業者、仕様装置、部品名、製品サイズ、製品の厚さ、基板の層数などの生産管理情報を、YDC SONARでマージしました。
その不良情報をある板厚以上と未満に分類してみると、一定の板厚未満のプリント基板にパターン欠損不良が特異的に発生していることがすぐにわかりました。実際にコンベアのローラーを見てみると基板落下防止用の小径フリーローラーのピッチが、不良が発生しているピッチとサイズや位置が一致していることから、一定の板厚未満のプリント基板は自重でたわんでしまい、ローラーに接触してパターン欠損が発生することが分かりました。
YDC SONARでこれまで独立していた情報を結びつけて、プリント基板の板厚とパターン欠損不良の関係を解析することができたからこそ、短時間で要因を見つけることができました。
実装ラインにおいても、YDC SONARの導入以前から潜在する慢性的な不適合原因を探り出し、品質改善の取り組みを実施してきており、一定の改善効果は出ていました。
しかし、品質改善のスピードをさらに向上させることを期待し、YDC SONARを導入しました。
たとえば、多品種大量の生産データを「はんだ付け」不適合モード別に分析してみると、はんだが正しく接合していない「濡れ不良」と部品本体が基板面より一定以上浮いてしまう「部品浮き」の2つのモードが多いことが分かりました。
そこでさらに、YDC SONARで濡れ不良の要因を解析します。解析のステップは次の通りです。
(1)過去3ヵ月間のAOI検査データから 濡れ不良のデータと部品番号を結び付け、部品単位で集計
(2)濡れ不良データと5千万件のはんだ印刷時のはんだ体積などのデータとを関連づける
(3)生産日ごとに、面内のはんだ体積のバラツキをグラフ化して確認
(4)抽出された部品データとCAD設計情報を結合し、解析
YDC SONARを利用した結果、5千万件という大量のデータを簡単に結合し、わずか数分で「濡れ不良」が発生している部品番号を検索して、不適合原因を絞り込むことができました。その結果、慢性的に発生していた不良の真の要因が特定できました。
同じようなことを実施しようとすると以前は1時間半以上の時間が必要でした。また、YDC SONARで分析したデータを視覚的に見せることで、当初の狙い通り、製品開発部門における理解も高まり、問題解決のスピードが加速しました。
装置から得られるデータのフォーマットを把握して、それらをどうマージするのか、そしてどう分析すればいいのか、導入当初はイメージできていない部分もありましたが、フューチャーアーティザン株式会社(以下、フューチャーアーティザン)にアドバイスをもらいながらテンプレートの設定をしていくうちに、自分たちでも直感的に設定や操作ができるようになってきています。
また、設定したテンプレートをほかの分析に横展開したり、既存のテンプレートを改編してほかの分析に利用したりすることもできるので、単に分析を行うということだけなく、ノウハウとして蓄積されていくというのも重要なポイントだと考えています。
YDC SONARの導入検討時には、その効果を疑問視する声もありました。しかし、品質や生産性が向上するだけでなく、これまで見えなかったものが可視化されるという、だれでも直感的に理解できるわかりやすい成果が上がっていることで、積極的に利用したいという声も数多く挙がってくるようになりました。
プリント基板の製造ラインや実装ラインにおける活用範囲を広げていくのはもちろんですが、将来的にはほかの精密機器の製造にも活用し、生産現場の可視化を進めていきたいと考えています。
日本の製造業が元気を取り戻すために、YDC SONARのようなツールの導入は効果が大きいと思います。そのために、ぜひフューチャーアーティザンには普及を図ってもらいたいと思いますが、YDC SONARの導入イメージや導入後の効果というのは、実際に自分の目で確かめないとわかりづらい部分もあるかもしれません。当社での導入例を見たいという企業があれば、できる限り対応したいと思いますので、フューチャーアーティザンへ声をかけていただければと思います。
お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
※取材日時 2012年3月
※横河マニュファクチャリング株式会社のサイト
※記載の担当部署は、取材時の組織名です。
※掲載文中の商品名は、変更・販売終了となっている場合があります。 詳しくは、当社のソリューションページをご確認ください。
CASE STUDY