お客様目線での業務プロセス改革で
「CPQ」を導入
見積作成の時間半減と仕様書の品質向上を実現

日本の製造業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる。その多くは工場IoT化や社内基幹業務のデジタル化による効率化を目的とした自社に閉じたものである。一方で、顧客に目を向け、顧客への付加価値向上による売上・利益拡大を目的としたDXは、日本の製造業においては、欧米と比べてまだまだ遅れている。
CNC自動旋盤のリーディングカンパニーであるシチズンマシナリー株式会社(以下、シチズンマシナリー)は、顧客への付加価値向上を目的に、顧客接点領域における業務プロセスのデジタル化に目を向けた。そこで採用したのが、Future Artisanが提供する個別受注型製造業向け「CPQ」であった。同社ではプロジェクト発足当初の中期経営計画で掲げた「2021年に売上800億(現在の目標は2030年に売上1000億円)」を目指し、「業務プロセス改革プロジェクト」を展開。
営業を起点として、設計、製造、サービスまでをお客様目線で最適化し、高い付加価値の提供を実現する。そのためのソリューションの1つが「CPQ」であった。CPQの導入によって、営業部門の見積作成時間を半減でき、さらに、経験の浅い担当者でもベテラン営業のノウハウを活用できるなどと好評だ。営業社員の提案能力が強化され、売上1000億円への手応えをつかんでいる。

シチズングループの工作機械メーカー

シチズンマシナリー株式会社は、長野県北佐久郡御代田町に本社を構える、シチズングループの工作機械メーカーである。シチズンの工作機械事業は、腕時計の精密部品加工を内製化するための一部門としてスタートした。時計部品の製造で必要とされてきた精密部品加工技術を培い、「コンパクト」で「スピード」を追求し「高精度」に加工できる工作機械づ くりに引き継がれ、それは現在でもお客さまに高く評価されている。
製品ラインアップとして、CNC自動旋盤の「Cincom」と「Miyano」の2つのブランドがあるほか、お客さま工場の自動化・省力化のニーズにお応えするソリューションとして「FA Friendly」を提供している。 同社製品の強みは、高い技術力と長年のノウハウに裏打ちされたきめ細かなカスタマイズ性にある。幅広い顧客ニーズ に対応できる多彩なオプションとアフターサービスを提供し、顧客満足度の高さでは定評がある。海外展開も積極的に 進めており、グローバルな販売網とサポート体制を整えている。


 


シチズンマシナリー株式会社

本社
長野県北佐久郡御代田町

創業
1930年

資本金
26億5,125万円

売上高
約816億円 ※2023年度実績

主な事業内容
工作機械(CNC旋盤)の開発・製造・販売・サービス

お客様に聞く

左から
開発本部 設計部 機械設計 1 課 CS 設計係 係長 相田勝洋氏、
営業本部 国内営業部 名古屋営業ソリューションセンター 小林千紗氏、
営業本部 営業推進部 営業企画課 高橋聖美氏、
営業本部 営業推進部 営業企画課 課長 坂下大介氏
※所属・役職は取材時点に基づく

「業務プロセス改革プロジェクト」開始

CPQの導入を含む営業系システムの刷新は、当時の中期経営計画がきっかけとなっている。2019年8月「業務プロセス改革プロジェクト」と名付けられ、営業・設計・製造・サービス各部門を横断する取り組みがスタートした。対象となる部門の業務プロセスをお客様目線で見直し、縦割り化が進んでいた社内の業務を刷新、ワンストップでお客様に対応できるサービス体制を目指した。顧客接点管理のため、CRMを組み込んでお客様の要求事項や商談記録を正確に残し、全社で共有する。営業が社内調整に奔走するのではなく、各部門がCRMで引合状況を把握してお客様目線で動く仕組みづくりの構築に着手した。「生産性向上を図るには業務の効率化だけでは不十分です。営業やサービスなどのお客様との接点を見直し、お客様により高い付加価値を提供できなければなりません」と、同社営業本部営業推進部 営業企画課 課長 坂下大介氏は説明する。

「みんなが顧客目線」で業務連携し、全社で顧客に付加価値を提供する。


同社が扱う機種は30~40種類ほどあり、それぞれに100種類以上のオプション(アタッチメント)が存在する。オプションの組み合わせは非常に複雑で、それぞれに排他関係もある。営業担当者は見積や仕様書の作成に時間がかかり、仕様の選択ミスも多かった。「お客様への素早い見積や、正確な仕様書の提出は、当社の付加価値になります。満足度が高まり、当社の競争力の強化につながります」と坂下氏は強調する。

カスタマイズ性の高い製品に適した「CPQ」

同社では先の中期経営計画で掲げられた「業務プロセス改革プロジェクト」に取り組む必要があり、そのタイミングでFuture Artisanから営業改革およびキーソリューションとなる「CPQ」の提案を受けた。Future Artisanの提案は特注の多い工作機械メーカーの課題をよく理解したものであったため、Future Artisanへ業務改革のコンサルティングとCPQ構築を依頼した。
「標準品の組合せで構成されるシンプルな製品であれば、他社CPQでも対応できたかもしれません。しかし、当社の製品はカスタマイズの多い複雑なものでしたからFuture Artisanが提案する『CPQ』が最適でした。Future Artisanが市場のリーダーであることも後から知りました」(坂下氏)。
実際、同社製品はカタログのまま売れるものは少なく、特に国内向け製品は、ほとんどがカスタム製品である。お客様の要望を聞きながらカスタマイズしていく受注形態であり、このきめ細かさが同社の強みでもあった。
「営業からの初期情報だけでは設計着手が難しい場合が多く、追加の質問を営業担当者に依頼し確認することが頻繁に発生していました。このやり取りを完全になくすことはできないにしても、CPQを導入することで打ち合わせの回数を大幅に減らし、リードタイム短縮や業務の効率化を図ることがきると確信しました」と、同社 開発本部設計部 機械設計1課 CS設計係 係長の相田勝洋氏は「CPQ」の印象を語る。

CPQ導入により営業と設計・製造間のやり取りが大幅に削減され見積LTが半減

稼働後もCPQルール定義をブラッシュアップ

CPQの稼働は2022年8月から。最初に見積作成フェーズを立上げ、それまで使用していた営業系システムから切り替わった。その後、機能拡張を実施していき、CRMを含めた統合システムの稼働は2023年1月からとなっている。
CPQはCRMと連携しており、営業がお客様との商談情報をCRMに登録、見積作成時にはCPQを活用しながらお客様の要求仕様を確定することで、迅速かつ正確に見積もりと仕様書を提示できるようになった。
受注に至ると、CPQで作成した仕様書がそのまま生産管理システムに送られる。さらに、出荷された機械の情報もサービス側のシステムに連携され、機械構成情報をもと にした適切なサービス対応が可能となっている。案件から 見積・仕様書、生産、サービスまで情報が繋がるようになっ たことも改革の成果である。
システム導入に際し、定義書の作成には多くの苦労が伴ったという。高橋聖美氏はシステム稼働後の定義書の運用担当である。「CPQが8月に稼働してからも、定義書の改善は延々と続いています。営業からの表示項目の変更や、アタッチメントの仕様追加・構成変更に関する要求に対応しています」と語る。メンテナンスを行う際には、ルール定義上の問題がないかを確認し、CPQにテスト登録し、本番環境に移行している。定義書のメンテナンスを自社内で行うことができるのも、Future Artisanが提供するCPQの特徴である。「一度で完璧な定義書を作成するのは難しいということが、稼働して改めて分かりました。使いながら今後も改善は続きます」と坂下氏も語る。

営業の業務時間半減と品質の向上

営業担当として小林千紗氏にうかがった。
「CPQ導入後は、排他条件により自動的に項目が外れたり追加されたりするようになり、営業が仕様書を目視で確認する必要が大きく低減しました。この結果、業務の負担が軽減され、心理的な負荷も減少しています。見積書の作成も効率化され、業務時間が半減しました。また、製造から仕様修正の要求も大幅に減少し、業務効率が向上しています」と効果を認める。
「CPQ導入により品質も向上していますが、具体的な指標がないため測定は難しい。しかしながら、営業サイドからは非常に好評です。設計と営業の打ち合わせ回数が減少し、伝達ミスのリスクも減っています」と坂下氏も笑顔を見せる。

付加価値を向上する「推奨CS」

CPQ導入により、過去に実績のある特注設計(CS)について品質・機能共に担保したものを厳選し「推奨CS」として流用できるようになった。営業はお客様からの要求に対し、近しい仕様の推奨CSを提案することで、新たな特注の設計時間が省略され、見積作成のリードタイムも大幅に短縮できる。また営業も自信をもってお客様へ提案することができる。
「カスタム製品のカタログなど提案手段がなかった以前と比べ、推奨CSがあることで営業が実績情報を活用しやすくなり、お客様への説明がスムーズに行えるようになります。これまでに130個以上の推奨CSを作成しました。製品の特徴を伝えやすい画像の追加や、設計者全員が参加出来るよう手順書も用意しています」と、相田氏は語る。CPQ導入を機に、設計部門は積極的なCS流用の取組みを始めた。これも、付加価値向上を目指したお客様目線での活動である。

CS検索画面:類似のCSを検索、複数のCS実績から推奨CSが表示される。写真や手順書などの詳細はCRMから確認できる

CPQシステムにはお客様の製品仕様選定の履歴が残り、各項目単位で詳細に情報が蓄積される。今後はこれを活用してニーズ分析や製品開発に役立てることで、お客様に対する提案力向上が期待できる。
同社では2030年に1,000億円の目標を掲げているが、今回のシステム導入によりその実現が前倒しになりそうだ。
「シチズンマシナリーの提供する付加価値がさらに高まると期待しています。『CPQ』の可能性を引き出しお客様に『シチズンマシナリーに依頼して良かった』と感じていただけるよう努力します」と、坂下氏は意欲を見せる。

 

※取材日時:2024年10月
シチズンマシナリー株式会社

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