
画像解析とは?仕組みややり方、AI活用事例を紹介
製造業において、品質と生産効率の向上は重要な課題です。特に、人間が直接関与する工程では、見間違いや操作ミスなどのヒューマンエラーが原因で不良品が発生する場合があります。歩留まりの改善に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
そうした課題を解決してくれるのが、「AI画像解析」です。撮影した画像を読み込んで、自動的に不良品を検出することが可能で、製造分野において「AI画像解析」の導入に注目が集まっています。
本記事では、「AI画像解析」とは何なのか、具体的な活用事例や導入のメリットを解説していきます。
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画像解析とは?
画像解析とは、コンピューターが画像データから意味のある情報や特徴を自動で抽出し、理解するための技術の総称です。
画像解析の方法
画像解析の方法として、大きく分けて「従来のルールベースの画像処理」と「AI(人工知能)を活用した画像解析」の2つに分類されます。
① 従来の(ルールベース)画像解析の方法
この方法は、人間が定めた明確なルール(例:この色、このサイズ、この明るさの範囲)に基づいて画像を処理します。
前処理: ノイズ除去や二値化などで、解析しやすい画像に整える。
特徴抽出と判断: 画像から寸法や輪郭などを抽出し、それが設定したルール(例:製品の直径は10mmか、キズの面積は閾値以下か)を満たすかを判断する。
主に、決まった形の計測や単純な品質検査など、ルールが明確なタスクを得意とします。
② AI画像解析の方法
この方法は、大量の画像データからAI(機械学習・ディープラーニング)が最適な判断基準を自動で学習し、複雑な解析を行います。
- 学習: 正解ラベルが付いた画像(教師データ)を入力し、AIに識別方法を学ばせる。
- 推論(解析・判断): 学習済みのAIモデルに新しい画像を入力すると、人間に近い柔軟な判断で物体を検出・分類する。
スマホの顔認証や自動運転のように、パターンの変化が大きい複雑なタスクを得意とします。
画像解析ソフトを使う
画像解析を実際に現場やシステムで実現するためには、専門的な画像解析ソフト(ツールやライブラリ)の活用が不可欠です。
これらのソフトは、上記で解説した「ルールベースの画像処理」や「AIによる高度な学習・推論」を実行するための土台となります。
ツールが果たす役割
画像解析ソフトは、複雑な処理をプログラミング言語で一から記述する手間を省き、効率的かつ安定した解析を可能にします。
従来のルールベース処理の実行: OpenCVなどの汎用的なライブラリや、特定の計測・検査に特化した市販のソフトウェアは、ノイズ除去、エッジ検出、寸法計測といったルールベースの処理を簡単かつ高速に実行するための機能を提供します。
AIモデルの学習と推論のサポート: TensorFlowやPyTorchといったディープラーニング向けのライブラリは、大量の教師データを効率よく学習させたり、学習済みのAIモデルをシステムに組み込んで解析(推論)を実行したりする基盤を提供します。
導入するメリット
画像解析ソフトを利用することで、ユーザーは数学的な処理の詳細に捉われることなく、目的の達成(例えば、「この製品の不良品を検出する」「この画像に映る人数を数える」)に集中できます。これにより、開発期間が短縮され、精度の高い画像解析システムを早期に実用化することが可能になります。
AI画像解析とは?
AI画像解析とは、コンピューターが大量の学習データからパターンを学習し、画像を見て自律的に情報を理解する技術です。
人が対象物を目にした際「これは猫だ」と認識するのと同様に、AIが複雑な画像から物体、人物、状況などの多様な情報を抽出します。スマホの顔認証や自動運転など、複雑で変化の多い現実のシーンでの応用が不可欠です。人力では時間が掛かり、判断にバラつきが出やすくなる作業でも、AI画像解析なら高速かつ正確で、柔軟な判断が可能となるため、ビジネスシーンでの需要が高まっているのです。
AI画像解析でできること
AI画像解析でできることはさまざまで、以下はその一例です。製造業をはじめ、多くの業界で活用が進んでいます。
- 物体認識:
写真に写る人やモノを認識し、「画像のなかの物体が何なのか」を特定します。猫が写っている写真であれば、「画像の中にいるのは猫」と判断する機能です。 - 物体検出:
物体認識があくまでも「画像内に何があるか」の判断に留まるのに対して、写真の中から、物体の位置・種類・個数などの情報を取り込み、何がどこに写っているのかを特定します。「対象外の物体の排除」まで行え、画像内の情報をより詳しく認識できます。 - 画像分類:
写真に含まれる被写体を判断し、共通した特徴を持つ画像を特定のグループに分類します。例えば、ある犬の画像をコンピューターに学習させたあとに、別の犬の画像を解析すると、自動的に犬のカテゴリーに振り分けられます。 - 画像セグメンテーション:
画像のどの部分に、何が写っているのか境界線を検出する技術です。ピクセル単位で分けることが可能で、個々の物体が違うも物だと認識できます。例えば、車載カメラの映像からどこに車道があるのか認識したり、衛星画像からどのエリアに何が存在するか認識したりといった識別が可能です。 - テキスト抽出(OCR):
画像内のテキストを識別し、読み取ることが可能です。例えば、製品や部品に付与されたラベル・バーコードを自動的に読み取って、在庫管理や品質管理などの業務を効率化できます。
製造業では、AI画像解析を活用することで、製品の品質を自動で判定し、不良品を即座に検出できます。さらに、不良の原因分析によって、品質改善にもつながります。
また、製品の状態から金型や製造機器の状態を逆算して把握できるため、故障や不具合によるライン停止を未然に防ぐことが可能になります。これにより、交換・修理のタイミングを最適化でき、歩留まりの改善にも寄与します。
ただし、AIの仕組みは複雑で、ブラックボックス化しやすいというデメリットもあります。「AIが出した判定を、素直に信用していいのかわからない」といった疑問を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか?
当社が提供するAI画像解析サービス「SearchMaru」は、判定結果の信用度を数値で可視化し、結果の根拠をわかりやすく提示できる点が特長です。さらに、ヒートマップを用いて、AIがどの部分を不良と捉えたのかまで可視化します。「AI画像解析がよくわからない」と思っている方にこそ、導入していただきたいシステムです。
AI画像解析の仕組みを簡単解説
AI画像解析では、コンピューターに大量のデータを学習させる「機械学習」によって、画像情報の認識を可能にします。機械学習の流れはシンプルです。
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人間の場合であれば、画像に写っている人やモノを、過去の経験をもとに判別しますが、コンピューターには蓄積された経験が存在しません。
しかし、機械学習を行えば、コンピューターも数多くの画像データから対象物の特徴を捉えられるようになります。一定のパターンを学習させる作業の繰り返しによって、予測や判断の精度を高めていくのです。「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる機械学習を発展させた手法により、画像認識の精度は飛躍的に向上しました。
AI画像解析の流れ
AI(人工知能)を活用した画像解析は、従来のルールベースの解析とは異なり、「学習」というステップが中心となります。
この流れを理解することで、AIがどのようにして画像の内容を把握し、判断しているのかが分かります。
データの準備
AI画像解析を行うための最初のステップは、「学習データ(教師データ)」の準備です。
AIは人間の赤ちゃんと同じで、何を認識すれば正解なのかを教え込まなければなりません。この「教え込み」のために、大量の画像に対し、その画像に何が映っているか、それがどこにあるかを人手でタグ付けしていく作業が必要です。この作業をアノテーションと呼びます。例えば、車の画像をAIに学習させる場合、画像内の車の部分を四角で囲み、「これは車である」という正解ラベルを付与します。この質と量がAIの性能を大きく左右します。
画像解析の機械学習をする
準備された大量の教師データを使い、AIモデル(特にディープラーニングモデル)の学習を行います。
AIは入力された画像データと正解ラベルを何度も繰り返し照合し、画像の中から物体を識別するために最も有効な「特徴」を自動で発見し、記憶していきます。この過程で、AIは人間が教えなくても「猫の耳の形」「車のタイヤの丸さ」といった複雑なパターンや判断基準を自力で獲得します。学習が進むにつれてAIの認識精度は向上し、人間では見落としてしまうような微細な違いも識別できるようになります。
AIモデルの実行
学習が完了し、十分な精度が出たAIモデルは、実務環境で利用可能になります。
この段階では、ラベルが付いていない新しい画像をAIモデルに入力します。AIは学習で得た知識と判断基準を用いて、入力された画像に対して「これは猫である(確率95%)」「ここに不良品がある」といった判断を下し、結果を出力します。この判断を下すプロセスを推論と呼びます。推論は学習済みのモデルを使うため、非常に高速に行うことができ、スマホの顔認証や工場のリアルタイム検査など、即時性が求められる場面で活用されます。
AI画像解析を導入するメリット
AI画像解析の導入には、主に以下のようなメリットがあります。
1. 人間の目では見つけられない異常の検出
人間の目では確認が難しい部分まで認識できる点や大量のデータから、細かいパターンの違いや異常を見つけ出す能力が強みです。
製造業では、製品のわずかな形状変化から金型の劣化を検知し、故障の前に保全対応を行う“予知保全”が可能になります。
成型機に使われている金型は、年々劣化していきますが、製品に大きな不具合が出るまで破損や変形がわからないことも。大きな異常が出てからでは、生産ラインがストップしたり金型が破損したりと損失が大きくなってしまいます。
当社が提供するAI画像解析サービス「SearchMaru」 は、データ活用基盤YDCSONARと連携することで、成型機・金型の劣化具合を製品画像から時系列で判断し、寿命が来る前にメンテナンスが必要だと知らせてくれます。完成した製品の品質管理だけでなく、製造機器のメンテナンス効率アップによる歩留まりの改善にもつながるのです。
2. 微粒子製品のなかから不良要因を特定できる
これまで検査員が粉体のなかの異物を探してきましたが、人的リソースや負荷が大きくかかっていました。
AIは、1つの画像から複数の欠陥を探すこともできます。「SearchMaru」では、微粒子製品の粉体画像のなかから、異物や欠陥の位置情報と分類情報を可視化してくれます。さらに、AI不良が発生した要因の解析まで行います。
3. 業務効率化によるコスト削減
AI画像解析の利点として、自動化によるコストの削減もあげられます。
例えば、製造業での「外観検査」では、AIが製品画像を自動的にチェックし、不良を即座に特定します。これまでの人間による目視検査では、判断基準や検査数にばらつきが発生してしまうデメリットがありました。
AIを活用した自動化によって、検査の精度向上や人員不足の解消につながります。また、余剰人員をより生産性の高い業務にまわすこともできます。
AI画像解析を導入するデメリット
AI画像解析の導入には、主に以下のようなデメリットがあります。
1. 精度の限界と誤認識のリスク
AIは大量のデータを学習することで高い精度を発揮しますが、常に100%正確とは限りません。
わずかな誤認識が不良品の流出や歩留まり低下につながるリスクがあります。
そのため、AIの判定は必ず専門家の確認と組み合わせて使うことが求められます。
2.不足による性能低下
AIの精度は学習に用いるデータに大きく依存します。しかし実際の製造現場では、必要なデータが十分に蓄積されていなかったり、ノイズや欠損を含む場合があります。
データの不足や品質の問題は、そのままAIの判断精度の低下につながってしまうため、導入前に「どのようなデータをどれだけ集められるか」を検討することが不可欠です。
3.専門人材の不足と技術継承の停滞
AIの導入・運用・保守には専門知識を持った人材が必要です。しかし、多くの企業ではこうした人材を確保するのが難しく、導入のハードルとなっています。
さらに、ベテラン社員の経験や勘に基づく判断がAIに置き換わることで、技術継承が停滞する恐れもあります。逆に、AIを使いこなすための新たな教育コストが発生することも課題です。
AI画像解析の代表的な活用事例
AI画像解析は、製造業や医療、小売業など、多種多様な場面で活用されています。
代表的な3つの事例を以下に紹介します。
AIによる原料選別で製造ラインをサポート
大手食品メーカーでは、ベビーフードに使うダイスポテトの製造工程に、AIによる検査プログラムを導入しています。
これまでダイスポテトに見られる小さな品質不良は、熟練の作業員が目を凝らして取り除いていました。当初は、製造ラインから「不良品を見つけ出す」フローで画像解析に取り組みましたが、不良品データの不足が致命的となり、結果につながりませんでした。
そこで、大量の良品データを学習させ、閾値から外れたポテトを不良品として判断する仕組みに切り替えたところ、ポテトの自動選別に成功しました。
医療画像診断技術の活用で診断をサポート
ある医療機器メーカーでは、独自のAIアルゴリズムを用いた画像解析サービスを全国の医療機関に提供しています。
医療現場では、レントゲンやMRI、CTなどの検査画像を基に、専門医が病気の原因の特定を行います。たとえ人間が見落としてしまう可能性のある小さな病変も、画像診断AIであれば検出が可能です。診断精度の大幅な向上が見込まれています。
また医療技術の進歩により、取り扱うデータ量が急増する昨今、現場で膨大な画像と向き合う医療関係者の負担軽減にもつながるでしょう。
類似画像検索でネット通販をサポート
AI画像解析は、オンラインショッピングの領域でも活用され始めています。大手テック企業が運営するECサイトでは、ショッピング内で利用できる「類似画像検索機能」をリリースしました。
スマートフォンのカメラを用いて対象物を撮影することで、見た目の似た商品を表示してくれる仕組みです。「名前が分からない商品を検索したい」「似ている商品を探したい」など、幅広い検索ニーズに対応し、多くのユーザーから重宝されています。
AI画像解析を始めるには
「自社でもAI画像解析を導入したい」と思っても、ツールを使わずに自力で導入するには多くの知識が必要です。初心者がAI画像解析を学ぶには、何から始めるべきでしょうか?
AI画像解析の仕組みを詳しく把握するには、プログラミング言語への理解や、機械学習・ディープラーニングなどAIに関する基礎知識が必要です。初心者におすすめの学習方法を紹介します。
プログラミングに関する基礎知識の習得
まずは、AIの操作に適したプログラミング言語に触れてみると良いでしょう。現在、AIプログラミングのなかで最も主流とされている言語が、Python(パイソン)です。
Pythonは、数あるプログラミング言語のなかでも人気が高く、科学技術分野を中心に広く使用されています。読みやすさ、書きやすさを重視して開発されているため、誰が書いても似通ったコードになる汎用性の高さが魅力です。
Windows / Mac / LinuxなどOSを問わず開発環境を用意でき、パソコン1つあれば無料で使用できます。独学でPythonを学べるサイトも数多く提供されているため、プログラミング初心者の方は一度目を通してみるのがおすすめです。
さらに、プログラミング言語だけでなくAIや機械学習・ディープラーニングの基礎知識についても把握しておくのがおすすめです。
機械学習(Machine Learning)とは、コンピューターが大量のデータからパターンや規則性を見つけ出し、学習した結果に基づいて予測や判断を行う技術です。データのどこに注目するべきかは、人間が判断して設定する必要があるため、AIによる画像解析には必須の知識となります。
ディープラーニングは機械学習技術の一種で、大量のデータから自動的に特徴を発見できる技術です。 手動で行われていたタスクを自動化したり、洞察に基づいた予測を行ったりするのに必要です。
初心者におすすめの勉強方法
ツールを使わずにAI画像解析を行うには、前述したような知識・技術を蓄える必要があります。
おすすめの勉強方法は以下の通りです。
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ややハードルは上がりますが、AI画像解析に関連する資格の勉強をしてみるのも1つの手段です。経済産業省がオブザーバーとなって設立されたデジタルリテラシー協議会では、ビジネスパーソンが習得すべきデジタルリテラシーの範囲として「人工知能(AI)・ディープラーニング領域」と、その領域を学ぶために必要な資格としてG検定を提示しています。
「G検定」とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施する検定試験です。 ディープラーニングをはじめとする、 AIに関する技術的な⼿法や、ビジネス活⽤のための基礎知識を確認できます。
まとめ
AI画像解析の導入は、業務の効率化や人手不足の解消につながる有効な手段として、今後ますます重要になるでしょう。
とはいえ、AI画像解析を理解するには専門性が求められます。必要なITスキルが不足している場合、導入そのものに抵抗を感じてしまう場合も少なくありません。
AIの専門知識がなくても自社で簡単に運用できるノーコード対応の「SearchMaru」 は、製造業の品質と歩留まり向上に貢献します。
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また、製造データ活用基盤(YDCSONARなど)との連携は、工程間・拠点間のデータを横断的に解析し、さまざまな課題解決につなげることもできます。
「SearchMaru」 をご検討中の企業担当者様は、まずはお気軽にカタログをダウンロードください。







