森永乳業株式会社 様
業務情報を企業間で交換するEDI(Electronic Data Interchange)。1980年代後半から見られるようになり、通信回線は公衆電話網からISDN、インターネットへと移行、その形態もホスト中心からオープン系、さらにクラウド系へとシステム環境が進化している。EDIの技術基盤が変化する中でも、「業務を支えるミッションクリティカルなインフラである」という本質はまったく変わっていない。受発注、在庫照会、出荷、請求、支払いといった日々の業務に関わるEDIは、万が一停止すれば企業そのものの業務に重大な支障を及ぼす。安定性・可用性・保守性は最優先の要件である。同時に、取引先ごとに異なる通信手順やデータフォーマットに対応し続ける煩雑さは現場の課題として残っている。
そこで、日本を代表する総合乳製品メーカー森永乳業株式会社(以下、森永乳業)が採用したのが、フューチャーアーティザンが提供する「EDI Express」BPOサービスだった。「EDI Express」は24時間365日のサポート体制を整えており、突発的な障害や接続先との交渉・調整を迅速に対応。問題が発生した際には専門知識を持ったスタッフが即座にサポートし、業務への影響を最小限に抑える。「飛躍的に負荷軽減が可能となった」「コア業務に専念できる」と高い評価を得ている。
左から
情報システムセンター システム1課 アシスタントマネージャー 加藤俊―郎氏
情報システムセンター システム1課 マネージャー 鹿島清文氏
情報システムセンター システム1課 主務 前田幸彦氏
日本を代表する総合乳製品メーカー森永乳業株式会社。主力事業は牛乳・ヨーグルト・チーズ・アイスなどの乳製品を中心とする食品事業であり、国内の家庭用製品のみならず、業務用製品、栄養食品、育児・介護分野、さらには海外事業まで幅広く展開している。「森永のおいしい牛乳」「ビヒダスヨーグルト」「マウントレーニア」「ピノ」「PARM(パルム)」など、国民的ブランドを多数保有し、消費者の健康と食卓を長年にわたり支えてきた。
企業理念に掲げるのは「かがやく“笑顔”のために」。
「日々の生活や、家族や仲間との団らんを通じて、内面から自然とあふれてくる“笑顔”を生み出していきたい」そんな想いが、かがやく“笑顔”のためにという言葉に込められており、品質第一主義を貫き、安心・安全かつ機能性の高い製品開発を推進している。
同社の研究・情報センターは、神奈川県座間市にあり、ここに情報システムセンターが置かれている。情報システムセンターは、全社のIT基盤を支える中枢として機能し、基幹業務システムの開発・運用から、グループ内外とのデータ連携、セキュリティ管理に至るまで、幅広い役割を担っている。
同社EDIは1980年代から構築されているが、ホストコンピュータを利用するオンプレミス型のシステムであった。当時のEDI導入は、得意先からの要求に応じたものが多く、いわば「取引条件」としてEDIの規模も拡大してきた。
オープン化の流れが進む中でEDIもホストから切り出され、1990年代半ば、フューチャーアーティザン に構築を依頼した。
導入当初、フューチャーアーティザンのEDIは情報系のデータ交換を中心に活用されており、受発注などの取引データは異なるEDIシステムを利用するなど複数のEDIが運用されていた。
EDIシステムは無停止型サーバーで構築されていた。
しかし1990年代、通信品質は不安定であり、ノイズや回線トラブルによる通信障害も発生していた。森永乳業では、こうした回線敷設からサーバーの設置・運用・保守まで、すべてを社内の担当者が手作業で行っており、現場では多くの苦労を伴っていた。
「無停止型サーバーを使用していたものの、ある日まったく動かなくなってしまったことがあります。冗長構成だったのに、まさか止まるとは思いませんでした」と森永乳業株式会社 情報システムセンター システム1課 マネージャー 鹿島清文氏は当時を振り返る。
また、得意先との接続では、自社側だけでなく相手先のシステム障害にも対応が求められる。「回線が悪いのか、サーバーが悪いのか、相手なのかこちらなのか……その切り分けも難しい」と同社情報システムセンター システム1課 主務 前田幸彦氏も補足する。
「受発注の仕組みは、止めることはできません。だからこそ、その運用を社内のリソースだけで支え続けるのは、もはや限界でした」(鹿島氏)。森永乳業では、複数のEDIシステムが業務ごとに立ち上がっており、仕様や操作方法も異なっていた。それぞれに精通した人材を確保し続けることは現実的ではなく、共通のプラットフォームに統一しなければ、人的負担もコストも削減できない危機感があった。
2010年代半ば、すでにクラウドは一般的となり、ISDN回線の段階的な廃止も公表され、旧来のEDI通信環境を維持すること自体が困難になりつつあった。こうした背景から、「クラウドベースの運用へシフトし、社内で抱え込まず、信頼できる外部パートナーに任せる方向へ転換する必要がありました」と鹿島氏は語る。
選定にあたっては、複数社から提案を受けたが、「ソフトウェアやサーバー機器を提案する企業は数多くありました。しかし、ものを導入するだけでなく、その運用・保守まで包括的に対応できると明確に提案してくれたのはフューチャーアーティザンだけでした」と前田氏は認める。
EDIの導入・運用においては、システムだけでなく、通信障害やトラブル時の対応、定期的な改修、得意先ごとの仕様変更対応など、日々の安定運用が極めて重要である。「新しい案件や得意先とのやり取りも、スピーディーに対応できる体制が整っている。だからこそ任せられると感じました」(前田氏)。
クラウド化、標準化、アウトソーシング──これらの要件をすべて満たし、さらに情報システム部門と連携しながら運用を継続できるパートナー。それがフューチャーアーティザンであり、「EDI Express」の最大の魅力であった。
「EDI Express」の導入効果は、単に技術的な更新にとどまらず、情報システム部門全体の業務品質と心理的負荷に大きな変化をもたらした。
「今は障害ログを見ると、すでにフューチャーアーティザンさんが動いていて、対応が完了しているのがわかります。こんなに便利になったのだと驚きました」と語るのは、情報システムセンター システム1課 アシスタントマネージャーの加藤俊一郎氏である。加藤氏は10年前にもEDIを担当していた経験があり、当時は問い合わせや障害対応に追われる日々だったという。
「土日も当番制で対応していましたが、社内だけでは対処できないことが多くて、本当に大変でした」と加藤氏は苦笑する。現在では、障害発生時にフューチャーアーティザンが即座に原因を調査し、復旧対応まで一貫して行う。「安心して任せられるというのが、何よりの変化、効果です」と語った。
前田氏も「サーバー更新やOSのバージョンアップといった作業も、すべてフューチャーアーティザンが担ってくれている。おかげで、我々はコア業務に専念できるようになりました」と笑顔を見せる。
「EDI Express」は、森永乳業の基幹業務を確実に支えるインフラとして、その価値を日々発揮している。
「EDI Express」に対する満足度は高いものの、「今後は、Web-EDIで手動取得しているデータも、BPOサービスとして自動で取得・連携まで対応いただきたいと考えています」と前田氏は語る。
現在、Web上で手作業により取得したファイルを連携させる工程で、ファイルの選択ミスがしばしば発生しており、業務品質に影響を及ぼしている。「そこまで踏み込んでいただければ、こちらの作業も大幅に削減できるはずです」と前田氏は続ける。
また、加藤氏は「他社で導入しているような先進的な事例や提案をぜひ教えていただきたい。今後の進化を一緒に考えていきたい」と、継続的な提案への期待が語られた。
EDIの国際化対応も視野に入っている。前田氏は「現在は外資系(日本法人)の取引先とEDIを行っていますが、将来的に本国と直接EDIを行う可能性もある。その場合、現行の日本仕様では通じない部分も出てくるので、早めに体制や知見を共有しておきたい」と要求する。
進化していく企業業務の中で、EDIの止められないという要件は変わることなく、BPO型で支えるEDIインフラの存在価値はますます高まっていく。「EDI Express」はその中核にあり、「かがやく“笑顔”のために」を企業理念に掲げる森永乳業のミッションクリティカルな業務を支え続けている。
※取材日時:2025年5月
※森永乳業株式会社
会社名 | 森永乳業株式会社(MORINAGA MILK INDUSTRY CO., LTD.) |
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本社所在地 | 東京都港区東新橋一丁目5番2号 |
創業 | 大正6年(1917年)9月1日(設立 1949年4月13日) |
資本金 | 21,821 百万円(2025年3月31日現在) |
従業員数 | 単体:3,310名 連結:7,453名(2025年3月31日現在) |
事業内容 | 牛乳、乳製品、アイス、飲料その他の食品等の製造、販売 |
■ サービス/取り組み紹介
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