
統合報告書とは?有価証券報告書の違いや目的、作成手順を解説
目次[非表示]
- ・企業の統合報告書とは?簡単に目的や意味を解説
- ・統合報告書とは何か?意味や定義
- ・統合報告書の目的と役割
- ・統合報告書と有価証券報告書の違い
- ・統合報告書とコーポレートレポートの違い
- ・統合報告書とコーポレートガバナンス報告書の違い
- ・統合報告書と年次報告書の違い
- ・統合報告書とアニュアルレポートの違い
- ・統合報告書とIRの違い
- ・統合報告書の一問一答
- ・統合報告書はなぜ必要か?
- ・統合報告書は誰のために必要でどのように活用されるのか?
- ・統合報告書の提出先はどこか?
- ・統合報告書の開示義務や提出義務はあるのか?
- ・統合報告書の法的義務はあるのか?義務化されるのか?
- ・統合報告書の提出時期はいつか?
- ・統合報告書の作成メリットは何か?
- ・統合報告書がない場合はどうなるのか?
- ・統合報告書の発行にあたっての注意点は?
- ・非上場企業は統合報告書は不要なのか?
- ・統合報告書の主な内容・構成要素
- ・統合報告書の作り方手順
- ・統合報告書の作成を支援する「ESG経営共創サービス」
企業の統合報告書とは?簡単に目的や意味を解説
統合報告書とは何か?意味や定義
統合報告書(Integrated Report)は、企業が財務情報と非財務情報(ESG:環境・社会・ガバナンス)を統合的に開示する報告書です。企業の価値創造のプロセスや戦略、成果、ガバナンス体制などを総合的に伝えることを目的としています。これにより、投資家やステークホルダーに対して企業の持続可能な成長に向けた取り組みを明確に示すことができます。
統合報告書の目的と役割
統合報告書の主な目的は、企業の長期的な価値創造のストーリーを伝えることです。具体的には、以下の役割があります:
- 企業理念や戦略の明示:企業の価値観やビジョン、戦略を明確に伝える。
- 価値創造プロセスの説明:どのようにして価値を創造し、持続可能な成長を目指すのかを示す。
- ESG情報の統合的開示:環境、社会、ガバナンスに関する取り組みを財務情報と統合して報告する。
- ステークホルダーとの対話促進:投資家や顧客、従業員などとの信頼関係を構築する。
統合報告書と有価証券報告書の違い
特徴 | 統合報告書 | 有価証券報告書 |
|---|---|---|
主な内容 | 財務情報と非財務情報(ESG)を統合的に報告 | 財務情報に特化し、法律で定められた形式で報告 |
提出義務 | 任意 | 上場企業に義務付けられている |
目的 | 企業の価値創造ストーリーを伝える | 投資家に対して財務状況を報告する |
対象読者 | 投資家、顧客、従業員、地域社会など | 主に投資家、金融機関 |
統合報告書とコーポレートレポートの違い
特徴 | 統合報告書 | コーポレートレポート |
|---|---|---|
主な内容 | 企業の戦略、ガバナンス、ESG情報を統合的に報告 | 企業の活動や成果を広範囲に報告 |
目的 | 企業の価値創造プロセスを伝える | 企業の活動全般を紹介する |
形式 | 統合的なストーリー性を持つ | 報告内容が多岐にわたる |
統合報告書とコーポレートガバナンス報告書の違い
特徴 | 統合報告書 | コーポレートガバナンス報告書 |
|---|---|---|
主な内容 | 財務・非財務情報を統合的に報告 | 企業のガバナンス体制に関する情報を報告 |
目的 | 企業の価値創造ストーリーを伝える | ガバナンス体制の透明性を示す |
提出義務 | 任意 | 上場企業に義務付けられている |
統合報告書と年次報告書の違い
特徴 | 統合報告書 | 年次報告書 |
|---|---|---|
主な内容 | 財務・非財務情報を統合的に報告 | 財務情報を中心に報告 |
目的 | 企業の価値創造プロセスを伝える | 企業の年間の業績を報告 |
対象読者 | 投資家、顧客、従業員、地域社会など | 主に投資家、株主 |
統合報告書とアニュアルレポートの違い
特徴 | 統合報告書 | アニュアルレポート |
|---|---|---|
主な内容 | 財務・非財務情報を統合的に報告 | 企業の活動や成果を広範囲に報告 |
目的 | 企業の価値創造ストーリーを伝える | 企業の年間の業績や活動を報告 |
形式 | 統合的なストーリー性を持つ | 報告内容が多岐にわたる |
統合報告書とIRの違い
特徴 | 統合報告書 | IR(インベスター・リレーションズ) |
|---|---|---|
主な内容 | 企業の戦略、ガバナンス、ESG情報を統合的に報告 | 投資家向けに財務情報や戦略を伝える |
目的 | 企業の価値創造プロセスを伝える | 投資家との関係構築と情報提供 |
対象読者 | 投資家、顧客、従業員、地域社会など | 主に投資家、アナリスト |
統合報告書の一問一答
統合報告書はなぜ必要か?
統合報告書は、企業の財務情報と非財務情報(ESG:環境・社会・ガバナンス)を統合的に開示することで、企業の価値創造のプロセスや戦略、成果を明確に伝える重要なツールです。これにより、投資家やステークホルダーに対して企業の持続可能な成長に向けた取り組みを示し、信頼性と透明性を高めることができます。
統合報告書は誰のために必要でどのように活用されるのか?
統合報告書は、主に以下のステークホルダーに向けて作成されます:
- 投資家・金融機関:企業の長期的な価値創造の可能性を評価するために活用します。
- 顧客・取引先:企業の社会的責任や持続可能性への取り組みを確認するために利用します。
- 従業員:企業のビジョンや戦略を理解し、共感を深めるために活用します。
- 地域社会・NGO:企業の社会貢献や環境への配慮を確認するために利用します。
これらのステークホルダーは、統合報告書を通じて企業の全体像を把握し、信頼関係を築くことができます。
統合報告書の提出先はどこか?
統合報告書は、主に企業のウェブサイトやIR(インベスター・リレーションズ)サイトに掲載されます。特定の提出先は法律で定められていませんが、企業の透明性を高めるために広く公開されることが一般的です。
統合報告書の開示義務や提出義務はあるのか?
現時点では、日本において統合報告書の開示義務や提出義務は法律で定められていません。しかし、企業の透明性や社会的責任を示すために、多くの企業が自主的に発行しています。
統合報告書の法的義務はあるのか?義務化されるのか?
現在、日本では統合報告書の発行は義務ではありませんが、ESG投資の拡大や企業の社会的責任への関心の高まりにより、今後義務化される可能性もあります。企業は、社会的な期待に応えるために、積極的な情報開示を検討する必要があります。
統合報告書の提出時期はいつか?
統合報告書の提出時期は企業の決算期に合わせて作成されることが一般的です。多くの企業では、決算発表後の数ヶ月以内に発行されます。例えば、3月決算の企業では、6月から9月にかけて発行されることが多いです。
統合報告書の作成メリットは何か?
統合報告書の作成には以下のようなメリットがあります:
- 企業の価値創造の明確化:財務情報と非財務情報を統合することで、企業の価値創造のプロセスが明確になります。
- ステークホルダーとの信頼関係の構築:透明性の高い情報開示により、ステークホルダーとの信頼関係を築くことができます。
- ESG投資の促進:ESGに関する情報を積極的に開示することで、ESG投資家からの関心を引きつけることができます。
統合報告書がない場合はどうなるのか?
統合報告書がない場合、企業のESGへの取り組みや価値創造のプロセスが外部に伝わりにくくなります。これにより、投資家やステークホルダーとの信頼関係構築が難しくなる可能性があります。
統合報告書の発行にあたっての注意点は?
統合報告書を発行する際には以下の点に注意が必要です:
- 透明性の確保:情報は正確かつ透明に開示することが求められます。
- ステークホルダーの関心に配慮:各ステークホルダーの関心事を反映させることが重要です。
- 継続的な更新:毎年の発行を通じて、企業の進捗や変化を反映させることが求められます。
非上場企業は統合報告書は不要なのか?
非上場企業においても、統合報告書の作成は有益です。特に、ESGへの取り組みや社会的責任を外部に示すことで、取引先や地域社会との信頼関係を築くことができます。
統合報告書の主な内容・構成要素
統合報告書の内容一覧
統合報告書には以下のような内容が含まれます:
- 企業のビジョン・戦略:企業の長期的なビジョンや戦略を示します。
- ガバナンス体制:企業のガバナンス構造や方針を説明します。
- ビジネスモデル:企業の価値創造の仕組みを示します。
- リスクと機会:企業が直面するリスクや機会を明示します。
- パフォーマンス:財務および非財務のパフォーマンスを報告します。
- 見通し:将来の見通しや目標を示します。
統合報告書のフォーマット
統合報告書には統一された厳密な様式はありませんが、国際統合報告評議会(IIRC)が策定した「統合報告フレームワーク」に沿った構成が推奨されています。以下は一般的なフォーマットの例です。
統合報告書は、国際統合報告評議会(IIRC)が定めた「統合報告フレームワーク」に基づいて作成されるのが一般的です。企業の規模や業種に応じて内容や順序に柔軟性がありますが、以下のような構成が広く採用されています。
ただし、自社の強みを活かした内容を入れることで、オリジナルな報告書を作成することが重要です。
▶ 推奨フォーマット例
セクション | 内容概要 |
|---|---|
1. トップメッセージ | CEOや代表からの価値創造へのコミットメント、社会への貢献、未来像など |
2. 会社概要・事業環境 | 企業ミッション、組織構造、事業領域、市場トレンドなど |
3. 価値創造プロセス | インプット→ビジネスモデル→アウトプット→アウトカム→価値創造の流れを図式化 |
4. マテリアリティ | 自社にとって重要なESG課題と、その影響度・対応方針 |
5. 戦略とKPI | 中長期経営戦略、財務目標、非財務目標、リスクと機会の記述 |
6. パフォーマンス | 財務指標(ROE、営業利益率など)およびESG実績(CO₂削減率、社員多様性など) |
7. ガバナンス構造 | 取締役会の構成、内部統制体制、コンプライアンスへの対応 |
8. ステークホルダーとの関係 | 顧客、従業員、地域、投資家との対話とフィードバックプロセス |
9. 今後の展望 | 価値創造の将来ビジョン、社会課題に対する自社のスタンス |
10. 添付資料 | GRI、TCFD、ISSBとの対応表、第三者保証、用語集など |
統合報告書の作り方手順
手順1:マテリアリティ(重要課題)を特定する
統合報告書の第一歩は、自社にとって重要なESG課題=マテリアリティを特定することです。自社のビジネスモデルとステークホルダーの関心をもとに、何を「重要な価値創造要素」として報告すべきかを明確化します。
手順2:情報収集と部門連携を行う
次に必要なのが、関連情報の収集と部門横断的な協力体制の構築です。財務部門だけでなく、経営企画部、サステナビリティ推進部、IR部門、人事、環境、安全衛生など多くの部署と連携して、データの正確性と一貫性を担保します。最大の難関はデータの収集と一貫性の担保です。アナログ管理になっていることが少なくありません。データの正確性と一貫性を担保し、担当者の負担を軽減するDX基盤の導入が不可欠です。
手順3:構成を設計しストーリーを作る
報告書の構成案を設計し、企業としてどんな「価値創造ストーリー」を伝えたいかを整理します。単なる実績報告ではなく、「将来に向けてどう成長するか」が伝わるストーリーテリングが重要です。
手順4:開示・レビュー・改善を実施する
最終的なドラフトを作成したら、社内レビュー・経営陣確認を経て開示へ。初回発行後も「毎年改善」を前提に、KPIの進捗や課題を継続的に見直す体制を整えることが重要です。
統合報告書の作成を支援する「ESG経営共創サービス」
ESG経営共創サービスの概要
フューチャーアーティザンが提供する「ESG経営共創サービス」は、企業のESG戦略立案から統合報告書の作成までを一貫して支援するサービスです。価値創造ストーリーの設計やマテリアリティ特定、IR資料との整合性確保まで、実務に精通したコンサルタントが伴走します。
フューチャーアーティザンが必要な3つの理由
1. データ統合による実務負担の解消:
- サステナ担当者のペイン: 「バラバラに存在するGHGデータ収集の手間と工数負荷」
- 提供価値: 貴社プラットフォームKkuonを活用し、GHG排出量(Scope 1-3)のデータ収集・統合をDXで支援。担当者の実務負担を劇的に軽減し、データの信頼性を確保します。
2. 「攻め」の戦略軸、Scope Vの言語化:
- 経営層のペイン: ESGへの取り組みがコストにしか見えない
- 提供価値: 独自のコンセプトScope Vの視点を取り入れ、御社の活動を「社会への貢献」という形で明確に数値化・言語化。ESGを未来の成長戦略に変えるストーリーの構築を支援します。
3.戦略から実行まで「伴走」する体制:
- 担当者のペイン: 「コンサルティングで終わらせたくない」
- 提供価値: 価値創造ストーリーの設計から、マテリアリティの特定、部門横断的なデータ収集体制の構築まで、実務に精通したコンサルタントが確実に実行するまで伴走します。
どんな支援が可能か?
- 統合報告書の構成企画とストーリー設計
- マテリアリティの分析・特定支援
- ESG経営戦略浸透支援






