
【未来予測レポート2040先出し】その5 「壊れないモノ」から「進化し続けるモノ」へ
日本の「アナログな熟練の技」をAIで再定義し、企業の持続的価値に変える
DXが浸透しないと感じられる製造業に対し、本対談では、AIとサブスクリプションモデルがもたらすグローバルな強制力を解き明かします。日本が誇る高品質な「物」だけでは国際競争に勝てない時代が到来し、情報・データにも価値を置くことが前提条件となります。その上で、日本の製造業が持つアナログ的な熟練の技をAIで形式知化・継承し、それを企業独自のノウハウとして再構築することが、新たな時代の強みとなる可能性を探ります。
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https://youtu.be/w8yh8WKq7sw?si=soWfkhEW-AqtoEoL
グローバルの強制力:情報とデータが「前提条件」となる
田中 剛:
日本の製造業は今後、どういうような取り組みをしていくべきか、何を目指していくべきなのか、ヒントを少し与えるとしたらどんな感じですか。
田中 栄 氏:
まず、今まで「AIやITは隣の業界の話で関係ねえよ」という話だったんですけど、もうこれからAIは避けて通れない。サブスクの話は前提としてある。もう一つ、IT・AIを含めてやらざるを得ない最大の理由は、今グローバルで見ると避けて通れなくなっているからです。
ヨーロッパのインダストリー4.0はもう実装段階に入っています。今ヨーロッパ向けに輸出をしようとしたら、Catena-X(自動車向け)をやらないともう始まっています。ちゃんとデータを取って、どこで作ったんですか、どんなエネルギー使ってるんですか、人権配慮してますか、ということを取らないと輸出ができない。
あと、CBAM(炭素国境調整マネジメント)というのも始まっています。CO2の配慮をしないとその分課徴金を取りますよと。認証を取らないとヨーロッパに輸出させませんということが本当に始まっています。「いいもの安くできました」じゃもうダメなんですよ。
田中 剛:
モノの価値っていうことだけじゃなくて、情報にも当然同じだけの価値が今ついてきて、こっち側がもう前提条件になってきてる。
田中 栄 氏:
そうです。情報というのを取って流通させるというのが当たり前というか、やらなきゃいけないよ、という風になってきてる。でも、それやらないと商売できなくなっているというのが、今やらざるを得ない最大の理由です。

製造現場のAI活用:まずは「データ取得」から
田中 栄 氏:
まず製造業の中で、すでにAIを使っている例はたくさん出ています。分かりやすい例でいくと、画像生成AIを使って品質をチェックする。目で見てもしょうがないから、バシバシやるというのはトヨタなどで普通にやっています。
異常検知・予測検知も、センサーでデータを取りながら「これおかしいぞ」ということをあらかじめ予測することで、ラインが止まるのを防ぐことを本気でやっている。これによって、需要予測や在庫管理も、AIがやることによって何十%も落としたりもできています。
まずは皆さんの分かりやすいところから。AIはものづくりでちゃんとデータを取ることによって、効率化だったり、エラーを防いだり、ライン止めを防いだり、まだできてるんですよ。とにかく手をつける、データ取る。じゃないと問題が分からない。そこから始めることが第一歩だと思います。
田中 剛:
日本のものづくりは「良いモノさえ作ればいいんだ」というところで終わっちゃった。だからITが所詮プラスアルファなんです。でも今申し上げたように、サブスクが社会の前提になったから、皆さんのモデルを変えなきゃいけない。
集めたデータをどう活用し、自社の価値を上げるために使っていくか。ここのテーマについて是非アドバイスを。
田中 栄 氏:
一番ベタな話は、需要予測とか在庫予測です。あるいは、ラインが止まるのをAIを使って予測する。今まで2日かかっていたものが2時間でできて、20%の削減ができたなど、実感として感じられる入り口なんじゃないかなと思います。分かりやすいところから入るべきです。
「熟練の技」をAIで形式知化し、企業のノウハウに
田中 剛:
アナログ的な製造業の要素を、今度AIを組み合わせることによって、再度価値にしていこうという時には、どんなアイデアがあるんですか。
田中 栄 氏:
今AIで使われているものは、元々は食品の目利きのような、めちゃめちゃ熟練の人たちが勘と経験でやっていたものを、AIが真似できるわけないよというところから入っているんですよ。
デジタルなセンサーを使い、アナログの経験がある。今度は人間の手技みたいなものが、ただのメカニックのロボットじゃなくてAIのついたロボットなんですよ。小技が使えるんですよね。今まで無理だと思ったものができるようになる。
それをどうやるかというのは、まさに今まで強みとしたものをデジタル化の世界に持っていくノウハウであって、僕ね、そここそが本当に日本の強みになると思うんですよ。
田中 剛:
少子高齢化で熟練工がいなくなるのも分かっている。彼らの技術を形式知化しようとしていたものが、AIを使うことで、ある程度の推論が出てきて、最後のチューニングはアナログな熟練工の良さをうまく入れて、それを企業としてのノウハウとして蓄積できる。
田中 栄 氏:
そうです。今まで個人の属人的なものだった技術が、一つの実体となって継承可能なものになる。ちゃんと継続的に可能なものになるということは、事業の持続可能性につながるわけじゃないですか。これはとても価値のあることです。

日本が目指すべき「アーティザン・シップ」への転換
田中 剛:
AI活用によって属人化プロセスが解消されれば、企業はその人材をグローバル展開や、より高度な価値創出に振り向けられます。新しい仕事のやり方に製造業自身が変わることで、製造業に興味のなかった人たちも向くかもしれない。
田中 栄 氏:
変わっていかなきゃいけないです。ロボット、AIができるようなことをやっていたら、これからものづくりは汎用なものはフルオートメーションができちゃう。半導体なんかまさにもう人間入ってくれるな、という世界が当たり前になっていて、そこに人間が対抗しても勝ち目はない。
そうじゃなくて、人間力という全然違う世界、職人技とか生き残っている、これこそデジタルではできないと思い込んでいるもの。コカ・コーラのレシピのように、永続的についている会社は、根本を突き詰めていくとものすごいやっぱりアナログなノウハウだったりする。
田中 剛:
そのアナログ的な要素をいかにAIを活用するか。そして、日本企業はもっとその価値を大々的に出していかないと。例えばペプシと比べて10円安いからペプシにします、じゃなくて、「俺はコーラなんだ」という、感性に訴える何かがある。
そういうその製造業をなんかやっぱ一社でも多く増やしていきたい。そのためには、今日お話いただいたAIというものと向き合って、その可能性もちゃんと理解して、変わっていくためのロードマップを是非引いていきたいと改めて思いました。
田中 栄 氏:
逆に、ものづくりを今までやってないところは、味方を変えると僕ものすごいチャンスだと思うんですよね。
田中 栄 氏
アクアビット代表。未来予測レポート著者。マイクロソフトにて国内外のITビジネスに従事した後、2003年に独立。未来予測レポートの執筆を開始し、以来20年以上にわたり日本企業の中長期戦略に資する情報を提供。シリーズ累計導入実績は1600社以上。社会・技術・経済の動向を俯瞰し、10年先、15年先を見据えた未来像を描く。製造業をはじめ、自動車、通信、エレクトロニクス分野など幅広い業界で、次世代ビジネスの指針となる知見を提示している。
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