
【未来予測レポート2040先出し】その3 ASIがもたらす衝撃と人材育成の課題
人間の理解を超えるASIの出現と、AI時代に求められる「人間力」の本質
この対談では、AI進化の最終段階であるASI(超人工知能)が2040年に到来する未来を予測し、それが人類に与える衝撃とリスク、そしてメリットを議論します。AIが定型的な業務だけでなく、人間に代わって「考える」領域に踏み込む中、ホワイトカラーもブルーカラーも働き方を変えざるを得なくなります。本質的な変化に対応するため、企業と個人が身につけるべき「人間力」とは何か、その育成に不可欠なリベラルアーツの役割、そして日本の強みである「感性」を活かしたものづくりへの転換について語り合います。
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https://youtu.be/J74mpep4Cyc?si=RUV2YWD2M9SJ9WD5
人間の理解を超える2040年のASI
田中 剛:
今まではAIが出してきた答えをちゃんと判断しなきゃいけないよと言われたけども、判断不可能な世界ということですね。
田中 栄 氏:
ASIの最大の特徴は、一言でいうと「人間の理解を超える」ことです。人間の能力をどう考えてももうこれ勝てねえよ、という世界になります。
田中 剛:
何ができるようになるのでしょうか。
田中 栄 氏:
例えば、人間が手がつけられなかったもの、例えば量子力学とか宇宙とか、人体の秘密とか経済とか、複雑すぎて手が出なかったものが、AIによって解決されたり、僕らが分からなかったことを発見してしまう可能性が大いにあります。特に、生命科学はASIが出てくると恐ろしく進化する。冗談抜きで、長寿のことまで分かる可能性が大いにあります。
同時に、リスクもあります。ロジックが分からないので、例えば人間が「幸せになりたいんだ」と言ったら、AIが「分かりました」と言って、全人類を眠らせたりといった可能性だってあり得ます。理屈が分からないので、相手(AI)が間違っているかさえも分からない。その中でズレが起こると、とんでもない結果になる可能性がある。これはSFの世界ではなく、僕らが生きてるだろうこの時代に起こるということが、本気で絵として見えてきちゃったんです。
田中 剛:
メリットとしては、今まで自分たちでは考えもつかなかったことができるようになってくる。経済や天気予報など、わかんない状態なのが急に分かっちゃったりする。
田中 栄 氏:
そうです。これはやっぱりメリットとして使わないという選択肢はないですね。人類の歴史の中で、人間の労働を噛まさずに富が作れるようになっちゃったんですよ。
AI革命の本質:機械ができない「人間力」
田中 剛:
AIがどんだけ今後進歩しても、人間しかできないことはたくさんある、とおっしゃっていました。では、AI時代において、人間に求められる役割は何でしょうか。
田中 栄 氏:
今回起こっているのは、産業革命です。ビジネスのあり方が根底から変わります。ホワイトカラーであれブルーカラーであれ、定型作業と言われたものは大半はもう機械ができるようになる。人間は自分のやらなきゃならないことを変えるしかない。
人間に求められるのは、もう機械にできないこと、ざっくり言っちゃうと「人間力」です。具体的には、曖昧なこと、人によって価値や評価が違うもの、簡単に0か1では割り切れないアナログなもの。
例えば、「美しい」「可愛い」「かっこいい」「綺麗」なんていうのは人に違いますよね。あとコミュニケーション。AからBに伝えることは機械でもできるけど、そこに感情を乗せるとか、信頼関係をつなぐとか、心を込めるというのは人間しかできない。
あと、物事を前に進めることも人間しかできません。なぜなら人間には意思があり、エネルギーがあるからです。そして、決断と責任。これは、コンピューターがどんなに進歩しようが、所有権もないし、命もないので取りようがない。人間は、こういう人間しかできないものに役割を変えるしかないだろうというのが、僕が考える産業革命の本質です。
田中 剛:
ある企業の試算では、AIをフル活用した時に必要なのは、意思決定する人たちと、あとはラストワンマイルで急遽対処する人たち、1500人だけでいいと。まさにコミュニケーションだったり、決断して責任持って行動する推進力だけが残るということですね。
経営の非合理性が生む価値観の転換
田中 栄 氏:
昨日ちょうどキリンがAIを役員に入れるという発表がありました。ついに来たかと。ビジネスは常に合理的な判断が求められますが、データ集めや間違えず判断するという意味では、経営者といえども機械に勝てない。
田中 剛:
残りの5%が重要になってくる。
田中 栄 氏:
残りの5%は、圧倒的に正しいAIの提案を、あえて「すべきではない」と判断することなど、非合理的な決断です。それが正しかったり、企業のカラーだったりするわけですから、それをできるのは人間だけなんです。
田中 剛:
人材育成でいうと、非認知能力が大事だという話につながります。テストの点数や偏差値(認知能力)では測れない、「強い推進力」や「熱い想い」、そして「周りを巻き込む力」など、数値では表しにくい能力です。
田中 栄 氏:
それが「人間力」です。逆に、東大トップや公務員試験一種に合格するような、「大量の知識を正確にスピーディに回答する能力」は、AIが最も得意なところです。安くて24時間働くAIには絶対勝てない。今まで重要だとされた人材がひっくり返る、価値観の本当の転換なんです。

感性に訴える力とリベラルアーツの復権
田中 剛:
では、その「人間力」をどうやって鍛えればいいのでしょうか。
田中 栄 氏:
海外ではリベラルアーツ(一般教養)が重要だとされています。具体的には、文学、哲学、心理学、自然科学、社会学などです。今まで「役立たない」「テストにならない」と言われたものが、実は人間の判断や物事の理由付けのベースであり、何よりもクリエイティブで深い人間の心に関わってくる。こういう豊かな土壌があるからこそ、クリエイティブが出せるわけです。
そのためには、「いいものを見ましょう」「本物に触れましょう」ということしか、もう多分言いようがないんです。
田中 剛:
アートを経営に取り込もうという動きが増えていますが、まさにそういう部分なのかなと。弊社の社名「アーティザン(創造的な職人)」も、日本の「伝統的な職人」(クラフトマンシップ)に、「アーティ(感性)」の要素を加えていこうという考え方です。
田中 栄 氏:
その通りです。論理的に一番効率的な答えを出すのはAIになります。しかし、「すごい非効率なんだけど、でもやっぱりこれ欲しいよね」と思わせる力。それこそスティーブ・ジョブズがポケットからiPodを出してきたという、感性に訴える力です。
私がマイクロソフトにいた頃は、合理性を突き詰めて面白さとか楽しさのかけらもないような会社でした。その対局にAppleがいて、美しさ、面白さということを前に出してきた。
田中 剛:
DXは、物作りは絶対なくならないという前提で、作り方、価値の作り方という言葉の中身が変わることです。ものづくりを根本からひっくり返さないと、もう多分やっていけない。

田中 栄 氏
アクアビット代表。未来予測レポート著者。マイクロソフトにて国内外のITビジネスに従事した後、2003年に独立。未来予測レポートの執筆を開始し、以来20年以上にわたり日本企業の中長期戦略に資する情報を提供。シリーズ累計導入実績は1600社以上。社会・技術・経済の動向を俯瞰し、10年先、15年先を見据えた未来像を描く。製造業をはじめ、自動車、通信、エレクトロニクス分野など幅広い業界で、次世代ビジネスの指針となる知見を提示している。
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