
気候変動ファイナンスの専門家と語る 製造業のためのESG戦略その1
「見えない価値」を会社の新たな強みに変える方法とは?
出演者プロフィール
■ 一般社団法人バーチュデザイン 代表理事 吉高 まり
■ フューチャーアーティザン株式会社 代表取締役社長 田中 剛
本対談では、バーチュデザイン代表理事の吉高氏を迎え、製造業におけるESG戦略と、「見えない価値」を企業の新たな強みに変える方法について議論します。環境価値を金銭化するカーボンクレジットのビジネス経験を持つ吉高氏は、SDGsが浸透しつつある教育現場や地域社会の動向を紹介。企業が持続的にESG活動を行うためには、それが「儲かる」ことにつながる経済的な価値として捉え、CO2の見える化を通じて製品の競争力を高める重要性を説きます。
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https://youtu.be/lN5cIC9nkgE?si=wIoO-4zrJEwuiZ72
「見えない価値」を金銭化するESGビジネス
田中:
本日はバーチャルデザインの代表理事 吉高さんにESGというテーマで語っていきたいなと思っておりますので、よろしくお願いします。お願いします。
吉高氏:
よろしくお願いします。
田中:
最近の活動で、COPとか含めて新しい情報などあればお願いします。
吉高氏:
私自身今この団体で何をしているかというと、皆さんが当たり前と思っていることが、実はとてもすごい価値があることがあるんです。私がずっと金融機関で環境価値を金銭化するという、特にカーボンクレジットと言われるもののビジネスをずっとやっていたんです。
実際、ものづくり方々にカーボンクレジットの話をすると、「マネーゲームをしている」「そんな見えないものを信じられない」とよく言われたのですが、今随分ポピュラーになってきました。もっともっとそういった価値のあるものが金銭化できるんじゃないかということで、この団体を立ち上げました。
田中:
変化という意味では、SDGsが問われている中で、若い世代の人たちがもう当たり前のようにキーワードを知っています。ただ、どこまで本当に活動するべきなのか、企業もすごく悩まれていると思います。
吉高氏:
東京大学と慶應義塾大学の方でグリーンビジネスを教えているのですが、学生が国連に提言をする活動もしています。すでに自分でクリーンエネルギーのビジネスを立ち上げている学生もいるぐらいです。
ESG活動を「コスト」ではなく「収益」に変える視点
田中:
多分、儲かるからやるってすごい僕大事だと思っていて。以前ウェルビーイングの話をトヨタの方としたんですが、ウェルビーイングもなんでやるのかって言ったら「儲かるためです」と彼ははっきり定義していました。みんなの精神状態が安定して幸福感があると、生産性が上がって結果ちゃんとビジネスが儲かるんだと。
そうじゃないと、企業は最終的には収益というものを求められるので、そこにちゃんと繋げていくというのは、結構やっぱり重要だとおっしゃっていたので、「儲かるためには」というこのキーワードはすぐ使えると思います。
吉高氏:
ウェルビーイングという言葉は、70年代に米国の経済学者が持続可能な経済のピラミッドを提唱していまして、基本的には自然資本を活用し、その上に人工資本や人的資源でサービスを作り、その上にウェルビーイングがあるというモデルがあります。
ウェルビーイングは、満ち足りた生活をしたいという欲求を満たしながらでないと、なかなか市場の外部不経済と言われる環境に考えが及ぼうという風にはならないのかなと思います。
田中:
バーチュデザインさんのパーパスは、「まだ目に見えない価値を価値に変える」ということですね。これをパーパスとして打ち出している理由というのは。
吉高氏:
私がカーボンクレジットビジネスを始めた時、「空気の証人」「何にも作ってないじゃないか」と非常に批判を受けましたが、今はこの環境価値がこれからの商品の価値になっていく時代になってきたということです。そういう時代を作りたいという思いを込めて、バーチュー(徳)デザインという名前をつけました。

製造業のCO2「見える化」と国際競争力
田中:
今一つやっているのは、我々CO2ラベリングをやっています。製造業である部品を作って、ある工程でこの仕様でやったらCO2をこんくらい排出します。これを食品のカロリー表示のように見せてしまいましょう。
お客さんと商談がある時、「この作り方したらCO2はこのぐらい削減できます」「こっちの方が高いんですけど、こっちが安いんです。さあどうしますか」ということを一つの価値として訴えられないかと。それを見積もりの段階で算出できれば、ちゃんとその価値として、要は良い物を高く買っていただくというところにつながるのではないかと。
逆に、製造業の方がまず最初にやるのは何からやったら良いか、何かヒントやアイデアはありますか。
吉高氏:
社長がおっしゃった通り、まずはCO2の見える化をして、定量化が一番大事です。数字が一番重要かなと思います。
自分たちの製品でいかに地球規模のCO2を削減しているかというのを見える化する、削減貢献量は、ワールドビジネスの世界ではもう標準化されています。これは日本の強みだと思っています。
日本政府の方ではGX市場を創出する中で、例えば金属などはどんなにCO2を下げて作っても、鉄という機能は何にも変わらないんです。そうすると高く売るのが難しい。今日本政府の方では、こういったものをちゃんと価格の中に出していくような削減実績量というのも検討しています。
田中:
日本の製造業は「いいものをちょっと安く供給していこう」という精神が多いですが、本当はいいものは高く供給するべきじゃないかと思っています。そこをちゃんと価値に転嫁していいんだよという、そのマインドも結構重要なんじゃないかと。
地域と次世代教育:SDGsが担い手を生む
田中:
環境省が全国で脱炭素地域を100箇所作ろうという活動の評価員をされているそうですが、どんな活動が起きているのですか。
吉高氏:
採択された地域(マックス50億円の補助金が出る)に来ますと、やはり肝は次世代教育なんです。次世代が育っていないと、そのビジネスそのものが持続可能ではないわけです。
今、地域大学と組むとか、高校生と組むとか、そういった未来の担い手に対して一緒にやっていくという活動をされている地方自治体が大変多いです。
田中:
特に若い世代の人というのは、興味をちゃんと今持ってきてるんですね。企業と一緒にその活動をすることで、やっぱり「そうしていくんだ」という方向に進んで、自分たちが当事者として買っていける、そういうステップが始まっているということですね。
吉高氏:
そう思います。我々の年代は経済が高かった時はそんなこと考えずに儲かってた時期があった。でも彼らはそうじゃない。異常気象が増え、大変な時期を過ごし、3.11も経験したような子供たちにとっては、「我々ここから何か作り出さないと、今後我々の将来に大変リスクがある」と感じている学生も多いのかなと。
その時にやっぱりこのサステイナブル、SDGsと言われる、私たちから見ると「どれも当たり前じゃないの?」という17の目標に対して、学校で地域企業と組んでプロジェクトを作り、人から喜ばれたり、大人から感謝されたりすることによって、自分たちのセルフプライドが高まっている気がしますね。

吉高 まり 氏
米国ミシガン大学環境・サステナビリティ大学院科学修士。慶應義塾大学大学院政策・メディア科博士(学術)。東京大学教養学部客員教授。慶應義塾大学特別招聘教授。IT企業、米国投資銀行などでの勤務を経、2000年より三菱UFJモルガン・スタンレー証券においてクリーン・エネルギー・ファイナンス部を創設、気候変動関連の資金枠組みづくり、カーボンクレジット組成、ESG、サステナブルファイナンスなどに関与。これらの知見を活かし、政府、地方自治体、金融機関、事業会社に向けてサステナブルビジネス、地方創生の領域についてアドバイスなどを提供するため社団法人を設立。環境省脱炭素先行地域評価委員、GX推進機構運営委員、国際園芸博覧会理事、東京都参与、金融庁サステナブルファイナンス有識者会議メンバーなど政府委員多数。
※プロフィール出典:https://www.virtue-design.or.jp/profile
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